12・25 サントリー・SPS第5回団体交渉

12・25サントリー・SPS第五回団体交渉

 

神奈川県地域連合労働組合

 

「退職手続きの書類を送りましたので確認してください」

 

 12月25日午後7時より、星陵会館においてサントリー・SPS(サントリーパブリシティサービス株式会社)と神奈川県地域連合労働組合の第5回目の団体交渉が行なわれた。
 最初に団体交渉に入る前に、前回、団体交渉の最後に「退職手続きの書類を送りましたので確認してください」という専務取締役・宇野の発言に対して、組合側から謝罪を要求した。そもそも、今まで団体交渉を続けてきたのは、不当な「雇い止め」通告を撤回させて職場に戻せ、職場に戻りたいという川村委員長の決意を受けて交渉を行なっているのである。宇野の発言はこの団体交渉自体を根底から覆す発言なのだ。今まで過去四回も交渉を続け、組合側からは“レット・パージ”すら知らない宇野にあれこれと解説し、今回の「雇い止め」が「思想・信条の自由」に踏み込むものであり、法的根拠も無く「雇い止め」することは、不当労働行為であることを訴えてきた。また、「無届欠勤」なる新たな「雇い止め」の理由を引っぱり出してきたときも、あとから「虚偽の申請は問題だ」なぞと「雇い止め」の理由を変更することなぞ許されないことも丁寧に説明してきた。そもそも本人から「勾留されていた」と聞いたその場で「無届欠勤」にも「虚偽申請」にも一言も触れず、そのうえ、「逮捕されたことが理由で『雇い止め』にはならない」とまで部長・大高は言い放っていたのだ。そうした積み重ねで何とかいい方向の解決をかちとろうと団体交渉を継続してきたのである。
 宇野は、この謝罪要求に対して「いきなり説明もなく書類を送りつけたら逆に失礼だと思った。その想いが伝わらず残念であり、私としては謝罪するつもりはない」と、団体交渉そのものを覆す行為であることをまったく理解せず開き直りとしか言いようが無い態度に出てきた。組合側からは、「手続きはあるだろうが、団体交渉とは別。団体交渉を継続するといっているが、それ自体がアリバイ的でしかない」「はっきり言って謝罪に値する行為。団交拒否と同じだ」「団交軽視だ」と非難が飛ぶ。しかも、こちらの追及が終わっていないのに、「申入れ」議題に移ろうとさえしてきた。「謝罪はしないのか。団体交渉に直結する内容。進行がスムーズに進まないことをわかってて言ったんですね。思いつきで言ったんじゃないんですね」との質問には「思いつきではありません。退職に関する手続きが必要なので、届くことをあらかじめ伝えたほうがいいと思った」と、あくまでも正当性を主張し続ける。この発言が団体交渉を破壊する発言であることを理解していないのである。
 宇野は組合側の厳しい追求に対して最後まで「ご立腹は理解しましたが、謝罪は必要ないと思います」と開き直り続け、社会性のかけらもないことを自ら暴露した。組合側としては、「謝罪しない」と豪語する宇野に対して「団交軽視」であり「不誠実団交」「団交拒否」と同じ行為であることを突きつけた。団体交渉を継続するといいながら、その内容は「拒否」であることを暴露しているサントリー・SPSの宇野に団体交渉を根底から破壊したことを理解させなければならない。

 

「裁量の自由がある」

 

 前回の団交で、サントリーグループ企業倫理綱領の「市民社会の秩序や安全に脅威を与える勢力・団体」が「反社会的勢力・団体」であるならば、「原発事故を起こした東京電力」や「沖縄のオスプレイを飛行させている米軍基地」、また「食品の偽装」も市民社会の秩序や安全に脅威を与えているのだから「反社会的勢力・団体」ではないのかという川村委員長の質問に宇野が「お答えできません」と回答したことに対して、サントリー・SPSとしての「反社会的勢力・団体」について見解を明らかにすることを今回の「団体交渉申入れ」で求めている。「申入れ」の「市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力・団体」について宇野は、暴力団とは違うと認識していることを述べた上で、「サントリー・SPSが考える『反社会的勢力・団体』とは殺人や傷害、爆発物の爆発など犯罪行為を容認している団体」「飛翔弾や内ゲバを機関紙「解放」で容認している」と述べ、「法的根拠の問題ではない。破防法や暴対法に提起されていない団体であっても、会社が自ら定めたルールの理解として『反社会的勢力・団体』と捉えて取り扱うことは何ら非難されることではない。しいて『法』を挙げれば、会社には憲法22条、及び29条に基づいた『裁量の自由』がある。誰を雇用するかは会社の自由な判断」と、言い放った。争議における企業サイドのお決まりである「裁量権」を持ち出してきたのだ。さらに、「1年の期間雇用であり更新する義務も無い」と契約満了の「雇い止め」を宣言したのである。「法」より会社が正しいと言っているのだ。そのこと自体、不当労働行為であり、「思想・信条の自由」に踏み込んだ排除であることを宇野は理解していない。さらには、「推測ではあるが他社も同じ判断をするだろう」とサントリー・SPSの判断が基準ででもあるかのようにあくまでも「会社にふさわしくない『反社会的勢力・団体』とかかわりがある人間は排除して当然」という姿勢を崩さない。組合側から「他社で働いている同じように弾圧された人間がすでに職場復帰している」と聞いた宇野は、「そういう判断をどうしてするのか疑問だ」とまで言い放ち、「会社が決めたことが妥当かどうかは第三者に決めてもらうしかない」と団体交渉拒否の姿勢をあからさまにした。
 「思想・信条は認める」「労働運動は認める」「仕事が終わった後は何をしても自由」「しかし法的根拠はまったく無いけど、『反社会的勢力・団体』とサントリー・SPSが勝ってに決めた団体とかかわりがあるから『雇い止め』」。こんな矛盾した理由がまかり通ると思っているのか。まさに現代の“レット・パージ”である。「反社会的勢力・団体」の人間を職場に復帰させた他社の良識は「理解不能」であり、「わが社こそが正しい」「『雇い止め』は当然」と、排除することを肯定しているのである。「殺人行為や爆発物を爆発させる行為を容認している」と言い放っているが、所詮、「市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力・団体」の説明に行き詰まり、後付で持ってきた理由に過ぎない。「原発事故」で労働者が被曝していることをどう思っているのか。沖縄で米軍機が墜落している事故を「安全だ」とでも思っているのか。サントリー・SPSの非常識なまでの社会性の低さが、専務取締役・宇野の発言からにじみ出ている。今回の団交は、宇野の解決能力、理解能力の低さが際立った団体交渉であった。
 1月24日、都労委で第1回調査が開始された。サントリー・SPSとの新たな闘いが始まる。川村委員長にかけられた現代の“レット・パージ”である排除攻撃と対決し、何としても不当な「雇い止め」の撤回をかちとっていかなければならない。