5・28 2007年「君が代」不起立処分取り消し控訴審    「逆転勝訴」ハタめく

  「逆転勝訴」の記者会見に臨む根津さんと河原井さん
  「逆転勝訴」の記者会見に臨む根津さんと河原井さん

5・28 2007年「君が代」不起立(河原井停職3ヵ月・根津停職6ヵ月)処分取り消し控訴審判決 「逆転勝訴」ハタめく!


               河原井純子


(一)これまでのさまざまな「雑木林の共闘」に感謝!!


 安倍政権のもと、「戦争のできる国」への暴走は日々加速化しています。「学校」や「教室」が「戦場」化しつつある今、いろんなかたちでの、まさに「雑木林の抵抗」を決してあきらめずに続けることが不可欠だと考えています。

 判決日の前夜、私は、「逆転勝訴」「不当判決」「分断判決弾劾」の3本のハタを用意しました。「2003年10・23通達」と「職務命令」の違憲・違法性を明らかにし、「すべての処分取り消し」を実現するという想いをこめて・・・です。

 当日、ハタめきました「逆転勝訴」。みなさんと共に手にした「逆転勝訴」です。ありがとうございました。心から感謝です。


(二)「逆転勝訴」とは


 本件の地裁判決は、河原井の「停職3ヵ月」は取り消し、根津さんの「停職6ヵ月」は過去の処分歴を理由に適法とし、ふたりの国家賠償の損害賠償請求は認定しませんでした。当日、高裁の須藤典明裁判長は、主文を読み上げた後、「・・・静かに聞いてください」と前置きして判決要旨の説明をしました。(10分間くらい)文を読みあげるのではなく、傍聴席にむかって語りかけたのです。異例のことでした。法廷にあたたかい空気が流れ、喜びの拍手の渦となりました。ふたりの停職処分が取り消され、損害賠償が認定されました。まさに「逆転勝訴」の時でした。


(二)―①「停職6ヵ月」取り消される


〈主文〉

1、控訴人らの控訴に基づき原判決中控訴人ら敗訴部分(原判決主文第2号)を取り消す。

2、東京都教育委員会が控訴人根津に対してした平成19年3月30日付け懲戒処分を取り消す。

3、被控訴人は、控訴人河原井に対し10万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

4、被控訴人は、控訴人根津に対し10万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

5、控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

6、被控訴人の控訴を棄却する。

7、訴訟費用は、第1審及び第2審を通じて三分し、その一を控訴人らの、その余は被控訴人の、それぞれの負担とする。

8、この判決は、第3項、第4項に限り仮に執行することができる。(6月29日に振り込まれる)

※「停職6ヵ月」は、2012年1・16最高裁判決(「職務命令」は合憲、停職3ヵ月は適法)の枠組みのなかではあるが取り消される。

※判決文から「停職六ヵ月取り消し」の内容を要約すると

・ハタ引き下ろしなど過去の処分や授業を問題視された文書訓告処分、そして再発防止研修ゼッケン着用処分などは、2006年停職3ヵ月処分時にすでに考慮されている。

・本件の2007年事件は、不起立のみで、それ以外の事情はない。(積極的なものは見当たらない)

・都教委が具体的な事情と主張している過去の処分歴・校門前出勤・新聞での「不起立の呼びかけ」などは、勤務時間中に勤務場所で実施したのではなく、学校の運営が妨害された事実はない。これを大きく問題視するのは、思想及び良心の自由や表現の自由を侵害することになる。

・停職処分は、職務上、経済上不利益が大きいので停職期間の相当性、合理性を基礎付ける事情が必要である。(本件ではそれらが見当たらない)

・停職上限は、6ヵ月で、次は免職である。上限の停職6ヵ月処分を科すのは教員身分の喪失で、心理的圧迫になる。

 大きく以上の理由で多くの人が「根津さんの停職6ヵ月が取り消されるのはかなり困難なこと」と考えていた厚い壁を打ち砕きました。


(二)―②国家賠償法上の違法を認定―損害賠償請求確定する


 判決文から認定の根拠は、

・(1999年)「国旗国歌法」立法時には間接的制約が意識されており、国会答弁や処分量定趣旨から処分には慎重な検討が要請されていたのに、都教委は機械的な累積加重処分をしてきた。

・学校の卒・入学式は、1年間に2回あり、2、3年の不起立で停職や免職に至ってしまう。自己の歴史観や世界観など思想に忠実であろうとする教員にとって、思想を捨てるか、教職員の身分を捨てるのか二者択一の選択が迫られる。(これは思想良心の自由の権利を定めた憲法19条の侵害につながる)

・都教委は、個別具体的に認定し、個人的社会的影響を慎重に検討して処分していない。(裁量権の濫用である)

・国会答弁(1999年)は、当然理解しておくもの。職務命令違反だけで機械的に累積加重処分するのは許されない。

・都教委の処分には過失があり、国賠法上も違法である。

・都教委は、職務上尽くすべき注意義務を尽くしたとはいえない。

・停職処分は、経済的不利益、職務の停止という職務上の不利益を受ける。その精神的苦痛、復職後の信頼関係の再構築への精神的苦痛は財産的損害回復では慰謝されない。


〈判決文28ページ6行~23行〉


 「・・・停職処分は、減給とは異なって単に経済的な不利益があるだけでなく、一定の期間その職務が停止されるという職務上の不利益を伴い・・・(略)・・・停職期間中は・・・児童生徒との継続的な人格的触れ合いをすることもできなくなり、ひいては教育活動に欠かすことができない児童生徒との信頼関係の維持にも悪影響を及ぼすおそれがあり・・・(略)・・・控訴人らが被った上記のような精神的苦痛は本件処分が取り消されたことによって図られる財産的な損害の回復によって当然に慰謝されて回復することになるものではないというべきである・・・(略)・・・」として、ひとりの損害賠償額を10万円が相当としました。(河原井の停職1ヵ月の時の損賠額は30万円で確定しています。停職3ヵ月、停職6ヵ月が各10万円相当には大きな疑問が残りますが。請求額はいずれも300万円でした。)

 国賠が認定されたことは、後続裁判や他の裁判にも影響が大と考えています。この判決をこれからの裁判闘争のエネルギーにしましょう。


(三)判決を最大限活かす 「後続裁判」に、「現場」に、「地域社会」にetc


 都教委は、期限ぎりぎりの6月11日に、「上告状兼上告受理申し立て」をしましたので、最高裁に入りました。都は、河原井の損賠については上訴しましたが、停職処分取り消しについては上告しませんでしたので、停職3ヵ月懲戒処分取り消しはここで確定しました。 私は、「君が代」処分撤回裁判は、「すべての処分取り消し」と「2003年10・23通達」「職務命令」の憲法判断を引き出せない限り、完全勝訴はありえないと思っています。

 どんな勝訴判決も「現場」で活かさなければ、ただの「紙切れ」です。最悪な敗訴判決も、みんなではね返すエネルギーをつなげることができれば何も怖くないです。

 心から、みなさんの「雑木林の共闘」に感謝しつつ、これからもお互いに決してあきらめずにつながっていきましょう!!私も「がんばらない あきらめない たのしみたい つながりたい」でいきます。