8・13~15福岡日雇い団結夏祭りを開催

夏祭りの成功に向けて総決起集会が開催された(須崎公園)
夏祭りの成功に向けて総決起集会が開催された(須崎公園)

 8・13~15福岡日雇い団結夏祭りを開催


福岡・築港日雇労働組合


 8月13日から15日までの3日間、福岡・築港日雇労働組合を軸とする「福岡日雇い団結夏祭り実行委員会」の手によって、福岡市・天神近くの須崎公園において、団結夏祭りが開催された。今年の夏祭りは、「失業も、夏の暑さも吹っ飛ばせ! 力を合わせて生きぬこう!」をメイン・スローガンに闘いぬかれた。

 会場の設営から撤収までの作業を担う設営班や、炊事班、洗い場班、警備班など、「実行委員会」の各班には、6年余りにわたる「仕事よこせ」の対市役所行動に関わってきた仲間たちをはじめ、多くの日雇い・野宿の労働者が積極的に参加した。新たに野宿を強いられた労働者も参加した。また、生活保護をとっている仲間たちも参加した。

 これらの仲間たちが諸作業を担い、さまざまな催しに参加することによって、活気ある夏祭りがかちとられた。「一人の野垂れ死にも許すな」と、労働者自身の手で仲間の命を守りぬくこの取り組みには、労働者人民の共感が集まり、反原発運動に関わる労働者・市民をはじめ、多くの人々が支援に加わり、炊事、洗い場などの仕事を担ってくれた。多くの資金と物資のカンパも寄せられた。こうした力で、夏祭りの成功はかちとられた。

 「安保法制関連法」案、名護新基地建設、川内原発再稼働と、安倍政府の暴走が止まらない。大資本を生きのびさせるために、労働者に一切のしわ寄せを押しつける政治も強めている。派遣労働という不安定雇用を拡大し、「生涯非正規化」「全社員非正規化」を進める「労働者派遣法」改悪案も、すでに衆院を通過している。「残業代ゼロ制度」を導入するための「労働基準法」改悪も狙われている。「マイナンバー制度」10月施行、「司法取引」と「密告」、盗聴の拡大による弾圧の強化が推し進められている。大資本に利益を与え、労働者を黙らせ、さらに徹底的に搾り取ろうというものだ。

 福岡市は、「アベノミクス」の目玉の一つである「国家戦略特区」の「グローバル創業・雇用創出特区」なるものに選ばれている。「労働規制の緩和」をもって、劣悪な労働条件での雇用を可能にすることで、内外の企業を呼び込もうというものだ。「解雇自由化」の国策を全国に先駆けて推し進めようというのである。労働者には、激しい競争と切り捨て、タダ働きと過労死の押しつけが強められるだけだ。膨大な失業者と「非正規雇用」の労働者が生み出され、野宿へと追いやられる労働者が、ますます増やされようとしているのだ。

 福岡における日雇い・野宿の労働者の状況は、より厳しさを増している。築港の寄せ場では、朝の5時から立っても、業者が来ない日々が常態化している。アルミ缶を集めてかろうじて命をつないできた多くの労働者たちには、昨年から「罰金」付きの「条例」が施行されている。生活保護費の削減も強行された上で、「生活保護ホットライン」なる「たれ込みダイヤル」により、生活保護受給者にも厳しい締め付けが加えられている。

 福日労は、6年余りにわたり、毎週のように「仕事よこせ」の対市役所行動を行ない、「生活保護より仕事がほしい」、「体が動くうちは働いて生活したい」という労働者たちの声を市に突きつけてきた。こうした要求を無視し続けている行政は、労働者に「野垂れ死ね」と言っているに等しい。実際にこの間、何人もの労働者が野垂れ死にを強いられている。

 なりふりかまわぬ安倍の暴走は、敵の強さではなく、弱さの表れにほかならない。闘えば必ず打倒できる。福日労は、夏祭りの準備で猛烈に忙しい中、8・9長崎反戦闘争に取り組んできた。今年は、これに続いて、川内原発再稼働阻止の現地闘争(8月10日~11日)にも断固として決起してきた。10日のデモは、原発正面ゲートに集まった労働者・市民から、大きな拍手と歓声で迎えられた。反戦の闘いを強め、本格的戦争に突き進む安倍政府をぶっ倒し、資本主義社会を葬り去るのは、労働者階級の使命だ。その先頭に、日雇い・野宿の労働者が起っていくのだ。

 夏祭りでは、政府―厚生労働省の出先機関である福岡労働局と福岡県に対する要求書の提出が行なわれた。後日、これへの回答をめぐって、福日労と労働局などとの交渉が持たれる予定だ。民間企業による首切りが強められるなか、「民間企業における雇用の拡充を促進する。失業対策事業の方式はとらない」と言い続ける政府の労働行政に対して、またこれを盾に取って公的就労対策の要求を受けつけようとしない福岡市、福岡県に対して、さらなる闘いを叩きつけていかなければならない。「民間における雇用の拡充」などまったく期待できないなかで、「原発労働があるではないか」という居直りを、絶対に許してはならない。ますます増え続ける「非正規雇用」労働者など、全国で失業・貧困に呻吟する労働者の先頭に起って、寄せ場―日雇い労働運動こそが、仕事をかちとる闘いの前進を切り拓いていかなければならない。

   炊事班の奮闘で多くの労働者の腹が満たされた
   炊事班の奮闘で多くの労働者の腹が満たされた

 〈一日目〉


 8月13日、朝6時の集合時刻には、すでにたくさんの日雇い・野宿の仲間が集まっている。軍手とタオルが配られ、全員で打ち合わせを済ませたら、さっそく作業開始だ。朝食ができる頃にはすべてのテントが建ち、寝床が作られ、布団も敷かれていく。会場内のステージ上には、団結夏祭りの開催を告げる大横断幕も張られた。あいにくの雨交じりの天候だが、仲間たちは力を合わせて作業を進めていく。会場の形は早くから整った。

 昼食の後、団結夏祭りの突入集会が開始され、開幕が大々的に宣言された。「実行委員会」を構成する各班が決意を表明し、「一人の野垂れ死にも許さないために、楽しく意義ある夏祭りにしていこう」という実行委員長の言葉で締めくくられた。

 午後3時からは、司法書士による生活相談が行なわれる。「生活上、分からないこと、困ったことがあったら、何でも相談してください」というあいさつを受けて、7人の仲間が相談に訪れた。終了予定時刻の5時を30分も超過するほど、熱心な相談が行なわれた。「細かくお話を聞くことで、問題解決につながることがあります。とにかく相談を」と語ってくれた司法書士に、惜しみのない拍手が送られた。

 夕食の後は、総決起集会だ。全国の寄せ場でも夏祭りが取り組まれていることが紹介され、連帯メッセージが読み上げられる。福岡の教育労働者からは、「戦後70年を迎えた今年に、私たちはかつての戦争へと向かうみちすじを断ち、一人ひとりの民衆が飢えることなく仕事に力を注げるように、ともに声を上げ行動していきましょう」というメッセージが寄せられた。

 続いて、「実行委員会」を代表して、福日労の仲間から今年の団結夏祭りの基調が提起される。「夏祭りを労働者自身の手で作り上げよう」、「『仕事よこせ』の闘いの前進をかちとろう」、「反戦の声と闘いを強めよう」という提起を、全体の盛大な拍手で確認する。

 集会の最後には、2日目の14日に行なう福岡労働局と福岡県に対する公的就労対策を求める行動への呼びかけが行なわれた。

 映画の上映で夜も更け、10時の就寝時間となる。その後は多くの労働者が警備のために不寝番を担った。


〈二日目〉


 朝食をすませ、さっそく「仕事よこせ」の対福岡労働局、対福岡県庁行動だ。厚生労働省の出先機関である福岡労働局と福岡県に対する要求書の内容が全体の拍手で確認される。

 要求書は、「昨年から今年にかけて、何人もの日雇い・野宿の労働者が野垂れ死にを強いられている。また、生活保護を取った仲間が孤独死を強いられている。多くは、築港の寄せ場などで長年働いてきた日雇い労働者である。われわれにとって、そのほとんどが顔なじみの労働者である。仕事の減少とともにやむなく築港を離れ、また生活保護による単身生活で、仲間たちとの接触も途絶えがちになった末の事態である。まったくと言っていいほど仕事がないという現実によって、日雇い・野宿の労働者が次々と野垂れ死にへ、孤独死へと追いやられているのである」、「辛うじて仕事にありつくことができた仲間の状況も厳しい。そのほとんどが、『福島原発事故処理』関連や、東北・関東大震災の『復興関連事業』である。福岡から遠く離れた危険な現場や、飲み水すらない現場で働かされながら、まともに賃金を受け取った仲間は、われわれが知るかぎり皆無である。『仕事がない』『仕事があれば何でもやりたい』という労働者の足元を見透かして、だまして、タダ同然でこき使っているのだ。その背景には、ゼネコンを頂点とした重層的な下請け構造があり、そこでの幾重ものピンハネ(違法な中間搾取)が野放しにされている実態がある」として、福岡労働局に対して、「東京都が行なっている『特別就労事業』のような、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業が行なえるよう、本省とともに検討をすること」、「福岡県や福岡市に協力して、必要・可能な措置を講じること」を要求し、福岡県に対しては、公的就労対策事業の実施に向けて、「国への働きかけや福岡市との協力を行なうこと」を求めている。

 要求行動に赴く代表団を拍手で送り出していく。代表団はまず、福岡労働局が入っている合同庁舎へと赴く。対応に出た職業対策課課長補佐、総務部企画室室長補佐に対して、要求書を読み上げて手渡した。「福岡労働局は仕事を作れ」、「失業・野宿の押しつけを許さんぞ」、「国は責任を取れ」と、何度もシュプレヒコールを叩きつけた。続いて福岡県庁に向かう。対応に出た福祉労働部労働局労働政策課企画調整係係長らに要求書を手渡す。その後、「福岡県は日雇い・野宿の労働者のために仕事を出せ」というシュプレヒコールを叩きつけて、須崎公園に引き返した。

 代表団は、公園内の仲間たちから盛大な拍手で出迎えられ、行動の報告を行なった。

 午前中は、衣類の放出も行なわれ、仲間たちは新しい衣類に着替え、午後には、歯科医師などによる歯科相談が行なわれ、何人もの仲間が相談に訪れた。歯科医師や九大歯学科の学生による、「一本でも多く残せるようよく歯を磨いて下さい」、「歯を大事にしているかチェックさせてもらうために、また正月に来ます」などのあいさつに、拍手が応える。

 夕食前の労働者交流会では、前日のアンケート結果が発表された。回答した仲間たちは、野宿、生活保護の受給、年金や日雇い仕事など様々である。全体の6割の仲間たちが、「生活保護より仕事がほしい」と回答している。高齢の仲間が多くなり、「生活保護を続けたい」という声が増えているのも事実である

 夕食後は、「博多ひばり歌謡ショー」だ。かなりの高齢ながら美空ひばりを彷彿とさせる美声に、会場全体が聞きほれた。さらに、友情出演した四人のお笑い芸に、会場は爆笑、また爆笑だ。


 〈三日目〉


 昼食の後には、「労働・生活・医療の大相談会」が行なわれた。まずは、相談を受け付けてくれる医師からの挨拶だ。「年齢が高くなると、色々な病気が出てきます。急に病院にかからなければならなくなった時に、自分はどこが悪いかを分かっていると、医者も治療しやすいのです。今日は精密検査の機械はありませんが、相談するだけでも違います」と、相談の大切さが強調された。弁護士からは、「どのような相談でも構いません。一人で悩まず、相談に来てください。問題解決のお手伝いをします」。さらに整体師による施術コーナーも設けられた。医療相談にも、労働・生活相談にも、法律相談にも、整体にも、多くの仲間が訪れた。

 午後4時からは、恒例の「福日みこし」が始まる。ハッピ姿にねじり鉢巻の十数人の仲間たちが、福日労ののぼりが立ったみこしを担ぎ、「わっしょい、わっしょい」のかけ声で会場内を練り歩く。さらには、何と会場の外にまでくり出し、「いったい何事か」と目を見張る通行人を尻目に、威勢よく駆け回る。相談会の後、残って観てくれていた弁護士もビックリだ。みこしが会場に戻ったところを、洗い場班の仲間たちがバケツやホースで思いきり水をかけていく。全員がずぶ濡れだ。大笑いと温かい野次が湧き、会場は大盛り上がりとなった。

 夕食時には、三味線の演奏で独特の歌を披露する女性アーティストの恒例のライブだ。労働者がいっしょに歌を歌い、太鼓を叩くなか、会場は爆笑の渦に巻き込まれた。

 夜は、川内原発再稼働のドキュメント映像や娯楽映画が上映された。

 翌8月16日の片付けにも、50人もの仲間たちが参加し、作業に汗を流した。こうして、2015年福岡日雇い団結夏祭りは、大成功のうちに幕を閉じた。福日労は、仲間たちの闘志にあふれ、笑顔の絶えない夏祭りで打ち固めた団結を武器に、今夏―今秋、「反戦・仕事よこせ」の闘い、安倍政府打倒の闘いに猛然と撃って出る決意だ。