特集 「『連合』、全労連を突破し、全労交の躍進を」

「連合」、全労連を突破し全労交の躍進を

 

 

〈「連合」第一四回定期大会〉

 

 「連合」(約680万人)は、10月6、7日、都内で第14回定期大会を開催し、2016年~2017年度の運動方針を決め、3期6年の任期を務めた会長・古賀が退任し、後任に「基幹労連」出身の事務局長・神津を選出。後任の事務局長には「UAゼンセン」会長の逢見が新たに就任した。

 大会冒頭にあいさつした古賀は、「労働者派遣法」改悪と「安保法制関連法」制定について触れた。しかし、「労働者派遣法」をめぐっては、「粘り強い法改正」「派遣で働く人々の処遇改善」が方針だと言い、あいかわらず「正規雇用」労働者―「非正規雇用」労働者の分断、「労働者派遣法」の存続を前提にした運動を推進するとした。「安保法制関連法」=「戦争法」をめぐっては、「与党は丁寧な合意形成を放棄し、審議が不十分」と言い、「戦争法」への批判―破棄方針ではなく、「戦争法」への労働者の合意形成を進めるべきだと言い放った。

 政治情勢では、「政権交代以降、一旦はなりを潜めたかにみえた新自由主義的な政策思想が、再び頭をもたげつつある」と言い、それに対する方針は、「いまこそ、働く者や生活者の声に向き合う政治が必要。そのためにも、政権交代可能なもう一つの政治勢力が結集し、『一強多弱』からの転換をはからなければならない」と、日共―全労連が打ち出している「『戦争法』破棄の国民連合政府構想」を意識し、民主党支持による「二大政党制」で対抗する姿勢を強調している。

 今大会で特徴的なことは、決定した「2016~2017年度運動方針」で、「働く者が大同団結できる社会正義の旗を掲げ、大衆運動を発展させていくことこそが、わが国唯一のナショナルセンターである連合の役割」と、「大同団結」を強調していることだ。会長、事務局長に「基幹労連」、「UAゼンセン」という「戦争法」賛成派、反共―「日の丸」労働運動勢力が就任し、「戦争法」制定を前提にした翼賛労働運動への純化をゴリ押しするために、「大同団結」を振りかざして「連合」内に残る「戦争法」反対派を封殺しようとしているのだ。

 また、運動方針の討議では、「UAゼンセン」から「700万人弱のうち、パートタイムの組合員が100万人近くになろうとしている。この人たちに具体的にどのようなことができるのかの視点に立って運動を強化して欲しい」という意見が出た。これは、「前回大会以降の2年間で『非正規雇用』労働者を中心に30万人の加盟組合員を増やしたのは自分たちだ」と自負する「UAゼンセン」が、「『労働者派遣法』改悪反対」なぞと『「非正規雇用』労働者のことを考えている」というポーズ作りに腐心してきた「連合」は、戦争翼賛の労働運動に「非正規雇用」労働者を秩序付けるという基調に純化せよと迫ったものにほかならない。

 

〈全労連第52回評議委員会〉

 

 全労連(約180万人)は、7月30、31の両日、都内で第52回評議委員会(大会に次ぐ決議機関)を開催し、2014年の定期大会で決めた向こう2年間の運動方針に関する補強を行った。

 昨年の定期大会で掲げた「三つの課題」(①賃金闘争、雇用安定や会保障拡充などに取り組む「全労連大運動」の飛躍②「かがやけ憲法署名」を軸とする憲法闘争の強化③すべての加盟組織の組合員純増を目標とする「組織拡大中期計画」――の三つの柱)を踏襲しつつ、その順番と括りを入れ替え、「憲法を守りいかす共同で、改憲と戦争する国づくりを阻止する」運動を前面に据えるとした。冒頭であいさつした議長・小田川は、「憲法違反、戦後最悪の法律である戦争法案の廃案に、全労連の総力を挙げる決意を、この評議員会で固めあいたい」と強調した。

 この評議委員会を前後した「戦争法」をめぐる国会攻防のなかで、「自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs)の「台頭」を見た日共・志位は、「安保法制関連法」成立後、野党の連携を図る「戦争法廃止の国民連合政府」構想を打ち出し、「自衛隊・日米安保容認」「天皇制擁護」なる姿勢を打ち出した。全労連はこの方針に追随し、「国民主義」「議会主義」路線をもって、実力で闘う階級的労働運動を憎悪する小ブルの「労働運動」に加盟組合員を動員するに至っている。

 大会での討論では、「重要段階での統一ストを含む大規模な統一行動の実施やメディアも活用した大規模宣伝の工夫など、戦術議論を深める」との方針に対し、「単産のスト権を確立するにあたって、政治的・社会的要求でストができるのか」なぞという質問が出ている。狭山政治ストライキなどに憎悪を燃やして敵対してきた日共版「労働運動」には、政治ストライキが位置付かないことが改めて露呈したということだ。

 全労連が昨年の定期大会で強調していた「組織拡大」は、2012年定期大会で確認された「新中期計画」が、2016年までの4年間ですべての単産・地方組織に10パーセント以上の純増を求めているのに対し、現状は、全労連の集計による組織人員(2015年6月末現在)が約108万人で、前年から1万6752人減少している。退職による減少分を新規採用者などの組織加入がカバーできない状況がこのところ続いており、2014年度で組織人員の純増を実現した産別は日本医労連と年金者組合のみとなっている。 

 全労連の基調は「すべての労働者の賃金改善こそ内需拡大」というものであり、資本主義の危機である「デフレ」を「内需拡大」で克服することを目的としている。つまり、資本主義経済の防衛と「成長」を前提にしたものだ。今回の評議員会では、昨年の大会で決定した「全労連大運動」の課題について、「実質賃金の底上げ」「時短を軸にした働くルール確立と労働法制の緩和など『雇用改革』の阻止」「社会保障拡充」などの各項目に加え、地域活性化を柱とする「持続可能な地域社会への転換を求める取組みの抜本的強化」の項目を新たに加えている。階級性を蒸発させ、労働者の資本に対する非和解の怒りと闘いを制動するというのだ。

 

〈自治労第88回定期大会〉

 

 自治労(約82万人)は8月24日から3日間、石川県金沢市で定期大会を開催し、向こう2年間の新運動方針を決定した。運動方針では、賃金闘争において、「人事院や人事委員会の勧告に対し、地域の独自性を重視して戦略的に対応していく」ことなどを重点課題とした。

 新たな運動方針では、(1)人事院や人事委員会の勧告に戦略的に対応していくことによる地方公務員の賃金闘争の強化、(2)「中道」「リベラル」勢力を総結集することによる政治への取り組み、(3)新たな組織強化・拡大の取り組み、の3点を当面の重点課題に掲げた

 昨年8月、人事院が打ち出した「給与制度の総合的見直し」に関連する新運動方針では、「人事院勧告制度それ自体は前提としつつも、国公との制度的・実態的差異に着目し、改めて地公法の『均衡の原則(とくに生計費・他自治体・その他を重視)』を根拠に、地域や各自治体の独自性を重視した『人事院・人事委員会勧告への戦略的対応』を基本に、取り組みを強化する」とした。また、地方公務員の賃金全体を底上げする闘争については、「春闘期から確定期までを見据え、すべての単組が『要求-交渉-妥結(書面化・協約化)』に取り組む」とし、給与制度の運用を改善させることなどによって、水準の上積みを求めるとしている。注意しなければならないのは、今大会でも、昨年4月、安部極右政府が「地方公務員法」を改悪し、「人事評価制度の導入等により能力及び実績に基づく人事管理の徹底をはかる」という管理強化と賃下げの攻撃を来年から開始しようとしているのに、まったく大会議論になっていないことだ。自治体業務の民営化を許し、現業部門の「任用替え」に同意し、能力主義を許さぬ労働運動の原則を自治労運動が自ら解体させることを許してはならない。

 当面の重点課題の二つめである政治への取り組みでは、「安倍政権に対峙する『中道』『リベラル』勢力を総結集するという政治方針への中央・地方での理解をさらに広める」とし、方針では、安倍政権が「戦後史を塗り替える作業を一気に推し進めることを鮮明にしている」とし、「憲法の前文および第9条を堅持する立場で、まずは、国会の段階で憲法改正発議を阻止する取り組みを進める」とした。

 今大会で決定的に重要なのは、安部極右政府が「安保法制関連法」を上程し、すでに「法」案が衆院を通過し、参院での攻防が焦点化しているにもかかわらず、これを粉砕する闘争方針が何ら具体的に論議されていないことだ。「戦争法」の成立―制定を許しておいて、「中道」「リベラル」に期待するなぞ、はじめから「闘う気がない」と吐露しているようなものだ。「国会の段階で憲法改正発議を阻止する取り組みを進める」なる方針は、「戦争法」成立を容認する方針に他ならない。

 「帝国の官吏」の道に転落する自治労が「組織率の低下」「正規職員の組織率が7割」「新規採用の組織率6割台」と悲鳴を上げているが、闘わぬ組織に結集する労働者がいるはずもない。また、闘わなければ「非制雇用」労働者の組織化の重要性を感じるはずもない。

 

〈日本郵政グループ(JP労組)第8回定期大会〉

 

 JP労組(約24万人)は、6月17~19日、石川県金沢市で第8回定期大会を開催した。

 本年度半ば以降に日本郵政グループの株式上場の準備が進められるなか、JP労組本部は、日本郵政グループの「新中期経営計画」への対応などを「重要課題」に掲げた。

 日本郵政グループは、昨年2月に公表した「中期経営計画」の内容を、株式上場スキームや低金利の継続等の経営環境の変化を踏まえて見直し、今年4月1日、2015~2017年度の3年間を展望した「日本郵政グループ中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン2017」(新中期経営計画)を策定。「将来にわたって『トータル生活サポート企業』として発展していく」ことなどを打ち出した。

 これに対して、JP労組は、「上場後のグループの姿を内外に明確にしたことは一定評価する」としたうえで、「今後は、この『新中期経営計画』を着実に実行し、グループを成長・発展させていくことを強く求めていく」とし、「チェック機能を最大限発揮していく」としている。この意味を委員長・小俣は「厳しい市場競争のなかにおいて勝ち残っていくため」と言っている。労働者階級人民の労働と生活をめぐった原則をもって郵政資本を点検―追及するのではなく、資本主義の市場原理をもって郵政資本の〝勝ち残り〟を追求すると言うのだ。ここまで露骨に労使運命共同体に浸る「労働組合」なぞJP労組のほかに存在しないだろう。「上場企業として当たり前のことを、すべての職場で徹底させることが、組合員との信頼関係を構築していく最大の責務だ」なる小俣のセリフには、一片の階級性もありはしない。

 日本郵政グループは昨年来、「新たな人事・給与制度」の導入を進めている。新制度は、役割を基軸としたコース別の人事体系を設定するとともに、原則、勤務地や職務内容が限定される「(新)一般職」の働き方を新設している。給与制度では基本給に毎年の査定で昇降する成果給部分を盛り込み、査定については賞与や退職金にも反映する仕組みにして、中長期的な報酬にも能力主義・成果主義を徹底しようとしている。昨年度からコース制への移行とそれに基づく人事評価、(新)一般職への登用などを実施し、さらに今年度からは、①新給与体系への切り換え②渉外営業社員の役割成果給の圧縮と営業手当の引き上げ③ポイント制退職手当の導入などを行なっている。

 これに対してJP労組は、「人事評価結果のフィードバックに関する苦情処理制度を新たに設けた趣旨に基づき、納得性の向上に取り組む」ことを方針としている。「納得性の向上」なるものをもって、資本への貢献度をめぐる競争に郵政労働者を叩き込むと宣言しているのだ。これは、「労働組合」が「労務担当」の役割を担うと言っているに等しい。 一方、組織拡大に関しては、「安定的に25万人組織を維持しつつ、さらに30万人組織に向けて取り組む」方針を打ち出している。また、大会では「「安倍政権が推し進める安全保障関連法案に断固反対し、恒久平和を希求することを誓い合う」とする特別決議を採択している。だが、資本や労務担当と寸分違わぬ主張をする連中が、いくら「恒久平和を希求する」なぞと言っても、それは、資本の利潤追求のためであり、安倍極右政府にとっては何ら脅威にもならない。

 

〈国労第84回定期大会〉

 

 国労は、7月30、31日、新潟県越後湯沢町で第84回定期大会を開催した。

 国労本部委員長・高野は、大会冒頭のあいさつで①「安保法制関連法」案、②JR各社における安全・安定輸送の確立、③国労の組織強化・拡大に言及した。

 今回の国労大会は、昨年の大会が国労の「連合」加盟を推進する書記長・真子の「補強提案」をめぐって紛糾し、異例の「一時休会」宣言、書記長・真子の辞任表明、「辞表の議長預かり」のうえでの真子の「企業別組合化と国労の名称変更にむけて『諮問委員会』設置」という集約答弁、運動方針採択後の委員長・石上の辞任表明という混乱をひきつぐものとなった。

 経過をめぐる質疑では、「2015年春闘を何故ストライキで闘わなかったのか。本部は弱腰だ」「全国単一体で闘うべきだ」「『安保法制』に対して政治ストライキを打つべきだ」といった本部批判が集中した。とりわけ、昨年の書記長・真子による国労のグループ会社ごとへの分割提案、「連合」への加盟提案に対する警戒、批判の意見が続出した。

 そして、書記長集約の承認をめぐって「集約の中で、組織の在り方について、専門委員会を設けと言われたが、この一年間議論が進まなかった中で、方針書にも書かれていないことを決め合うことはできない」という質問が出て、昨年大会を再現するような「一時休会」―中央執行委員会の急遽開催という事態となった。書記長が再答弁で「検討委員会などの諮問機関は、執行委員会で設置するもので、新執行部の元で判断していく」と集約の変更を行ない、最終的に運動方針の採択、スト権の確立がなされた。

 続く役員改選では、これまで国労本部三役は、委員長・書記長が「党員協」、副委員長は「革同」(共産党系)という「暗黙の了解」があったが、書記長の対立候補に「党員協」にも「革同」にも属さない高崎地本からの立候補があったことが明らかになると、現書記長・菊池が立候補を辞退し、さらに「無投票当選」が確定していた委員長・高野ら「党員協」系中執が一斉に当選を辞退した。結局、再選挙の結果、千葉地本から委員長、高崎地本から書記長が当選することとなった。この国労大会に続く8月24、25日に開催された国労東日本エリア本部の大会では、中央本部書記長を投げ出した菊池前書記長がエリア本部委員長に就任した。

 この一連の国労の動きは、全国単一体の国労のグループ会社ごとへの分割、「連合」への加盟という方針をめぐった国労内での対立が、「学校政治」が成立しなくなるまでに深まっていることを示している。

 

〈UAゼンセン第4回定期大会〉

 

 「連合」に加盟する日本最大の複合産別であるUAゼンセン(約147万人)は、9月9、10、広島市で第4回定期大会を開催した。

 大会冒頭のあいさつで会長・逢見は、日本経済の現状について、「デフレはいまだ脱却せず、好循環シナリオには乗っていないのが現下の経済情勢だと思う」と述べた。また、「安保法制関連法」=「戦争法」については、「安倍内閣が提出した安保法案については、反対の立場だ。これは連合、民主党と同じ立ち位置にある」と述べた。

 この逢見のあいさつは、UAゼンセンが「アベノミクス」批判、「戦争法」批判の立場であるように見えるが、逢見の本音はまったく違うところにある。6月26日夜、次期「連合」会長への就任が内定している逢見は、首相官邸で安倍と極秘会談を行っている。首相就任以来、安部は、「連合」会長・古賀とのトップ会談を一切拒否してきた。今回の会談について「連合」幹部は、「組織として関与していない。不愉快だ」と批判している。マスコミは「民主に揺さぶり」「『連合』を民間労組と公務員労組に分断する狙い」「『連合』の切り崩しが狙い」なぞと「分析」している。安倍との極秘のトップ会談が知られるに至り、安倍との癒着を覆い隠すために、逢見は冒頭のあいさつをおこなったのだ。

 しかし、「民主党と同じ立ち位置にある」と言いながら、逢見は、「集団的自衛権の行使を限定的に可能としたものであり、これまでの政府見解から一歩踏み出したものであり、それ自体は評価できる」と積極評価している。さらに、「昨年、UAゼンセンとして三役見解をまとめた」とする内容は、「『集団的自衛権は、権利として保有しているが、行使できない』としてきたこれまでの政府見解、いわゆる『72年見解』の見直しを検討することは必要なことだと思う」と言っている。

 結局、逢見のあいさつは、「戦争法」制定をもって戦時国家体制を形成しようとする安倍とのあいだで、戦争翼賛の「産業報国会」型労働運動に「連合」を純化させることを確認したことが露呈してしまい、その目論見がうまくいかなくなることを気にして行ったものなのだ。

 UAゼンセンの前身であるUIゼンセンは、2005年には、「連合」本部に対して、「集団的自衛権を認めるべきだ」「主権国家である以上、徴兵制をとらないということは自ら戦わないということを表明することになり不適当だから削除しろ」と要求している。さらに、安部極右政府を裏で支える日本最大の極右翼組織の「日本会議」に役員を送り込んでいる。昨年11月には、安倍の側近の櫻井よしこがサンケイ新聞で、「連合」の現状を「地方に行けば自治労や日教組が、いまだに反基地、改憲反対運動をやっている」と批判した。そしてUAゼンセンを持ち上げて、改憲、原発再稼働、愛国主義の「崇高な理念」のもとに「官公労と決別し、連合を分裂させよ」と呼びかけている。逢見と安倍との極秘会談はこの流れのなかにあることは明らかだ。

 UAゼンセンは、この一年間の組織化実績について、新加盟組合で3万3000人、企業内組織拡大で2万7000人、合わせて6万人の組織化を実現したと発表している。150万人近い組合員の半数以上が女性の「非正規雇用」労働者だ。資本とのあいだでユニオンショップ協定を結び、労働者を丸ごと組合員にし、資本に対して「非正規雇用」労働者の闘いを封殺することを約束するのがUAゼンセンだ。このUAゼンセンが「戦争法」の下で労働者に戦争翼賛を強いてくるのは明らかだ。

 

〈金属労協(JCM)第54回定期大会〉

 

 「自動車総連」、「電機連合」、「JAM」、「基幹労連」、「全電線」の金属関連5産別労組でつくる金属労協(JCM、約202万人)は9月1日、都内で定期大会を開催し、2016年度活動方針を確認した。

 金属労協は2015年春闘において、「6000円以上の賃上げ」の額による要求を掲げた。JCM全体での賃上げ獲得組合数、平均賃上げ額は、ともに前年の実績を上回った。挨拶した相原議長は、こうした2015年春闘の結果について、「継続的な賃上げによって、経済の好循環実現と生活を守るという2015年春闘の意義からみて、着実な成果をあげることができた」と評価した。つまり、「デフレ脱却と経済の好循環実現」を掲げる「アベノミクス」のための春闘で「成果を出した」と総括したのだ。そして、「世界経済の不安定要素や中国・新興国の経済動向には、より一層の注視が必要だが、一方で、デフレを脱却し、日本経済を何としても持続的な成長軌道に導く重要性は変わりない」と、「アベノミクス」の下での労働運動を推進することを方針基調として確認した。

 日帝企業が進出する海外の労働運動に対しては、「日系企業の海外事業拠点での労使紛争が増加している」として、「海外労組と日本の労組が一同に会するネットワーク会議の設置」を提唱し、「日系多国籍企業の労働組合のネットワーク構築に向けた取り組みを進める」としている。つまり、資本と非和解で闘う労働組合が日系企業で結成される前に労使協調の労働組合を育成するということだ。フィリピントヨタ労組の争議支援の地平をもって金属労協による海外の労働運動破壊を粉砕しなければならない。

 金属労協を構成する「基幹労連」は、原発再稼働―新(増)設を推進し、「電機連合」とともに武器輸出による企業利益の追求を平然と宣言している。10月1日に防衛装備庁が発足し、武器輸出を官民一体で推進する体制がスタートした。実質的な〝軍産複合体〟の形成だ。これを受けて金属労協は、12月に開催した第58回協議委員会で、2016年闘争方針として「防衛分野では、10月に防衛装備庁が発足しましたが、防衛装備品の国際共同開発や国内生産などによって日本の『ものづくり力』に維持・強化を図っていく必要があります」なぞと言っている。「日本のものづくり力」なぞと一般化し、世界の労働者人民の虐殺に使われる武器の開発・生産を「当たり前」のごとく言う連中に「労働組合」を名乗らせてはならない。日帝資本の「死の商人」としての世界展開と一体となった「労働運動」を推進する金属労協は、「戦争法」制定をもっての戦争翼賛の「産業報国会」型労働運動の尖兵としての位置にある。