6・25 再雇用拒否撤回第二次訴訟最高裁弁論

最高裁による不当判決阻止にむけ傍聴に結集した労働者(6月25日、最高裁南門)
最高裁による不当判決阻止にむけ傍聴に結集した労働者(6月25日、最高裁南門)

6・25再雇用拒否撤回第二次訴訟 

最高裁弁論

 

炎天下、傍聴席を倍する労働者が最高裁南門に結集

 

 6月25日午後3時から、最高裁第一小法廷で、「再雇用拒否撤回第二次訴訟」の弁論が開かれた。「再雇用拒否撤回第二次訴訟」は、都教委が2006年度から2009年度に行なった再雇用職員などの採用候補者選考において、卒業式などで「君が代」不起立を闘ったことを理由にして採用を拒否された都立高等学校教職員24人が東京都に損害賠償を求めた裁判だ。

 第一審は、2009年9月に提訴され、2015年5月の東京地裁の判決は、「起立斉唱しなかっただけで、不合格とするような重大な非違行為にあたると評価することはできない。再雇用等の『期待権』を侵害し、『裁量権の逸脱・濫用』で『違法』」として東京都に総額約5370万円の損害賠償を命じた。さらに、2015年12月の東京高裁の判決でも、第一審の判決内容が全面的に維持された。しかし、都教委は、再雇用制度を利用して「君が代」不起立の闘いをつぶすために、最高裁に上告したのだ。

 この日、真夏の暑さの中、傍聴券が配布される最高裁の南門前には、48人分の傍聴席に対して、それを倍する100人以上が結集した。

 傍聴整理券が配布される午後2時10分を待つ間、最高裁南門前では、「再雇用拒否撤回第二次訴訟」の原告団が、上告した都教委を弾劾するアピールを行なう。「第一審の提訴から8年7ヵ月もの闘いであった。その間には、原告の4人が亡くなったが、遺族が遺志を引き継ぎ、闘っている。この間、『君が代』不起立の闘いをめぐった裁判で反動判決が続いているが、これを許さず、本日の闘いをやりぬきましょう」。

 

原告団弁護士2人が「都側の上告の棄却を」求める弁論を行なう

 

 続いて、「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会(被処分者の会)」事務局長の近藤氏が、「一審・二審の判決は、都教委の主張をことごとく斥け、不当な採用拒否を断罪しています。『10・23通達』から15年。最高裁でも下級審判決が維持され、呻吟する学校現場に憲法を取り戻すきっかけとなると期待されていました」「しかし、最高裁は、私たちの期待に反し、都教委の『上告受理申立』を受理し、弁論を開くことを決定しました。弁論を開くということは、都に約5370万円超の損害賠償を命じ、、原告らが勝訴した一審東京地裁、二審東京高裁の判決を変更する可能性が高くなったことを意味します」「原判決の正当性と最高裁での勝利への確信をもって、本日の弁論に臨みましょう」と呼びかける。

 午後2時10分から傍聴整理券が配布され、午後2時20分には傍聴できる整理券の番号が発表される。抽選に外れた労働者は、午後4時から報告集会が開かれる参院議員会館にむかって移動を始める。

 最高裁第一小法廷で開かれた弁論で、東京都側は、「不起立行為は重大なる非違行為であり、本件再雇用等の採用に関しては広範な裁量権を有するから適法なので(採用の)期待権を認めた原判決の破棄を求める」と主張した。これに対して、原告側弁護団は、「原判決(一審、二審判決)は、東京都立高校の教職員であった被上告人らが、定年退職後の再雇用職員、あるいは、非常勤教員の採用選考に希望を出したのに対し、都教委が、被上告人らが卒業式などにおける国歌斉唱時に職務命令に反して起立しなかったことを理由として、不合格あるいは合格取消としたことについて、『都教委の採用選考における裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たり、違法となる』旨を判断し、被上告人らの請求を一部認容したものである。そして、上記内容の原判決に、上告人が主張する『法令の解釈の誤り』などは存在せず、よって、本件上告は棄却されるべきである」と主張した。

 弁論が終了した後、午後4時から、参院議員会館の会議室で報告集会が行なわれた。報告集会では、11人の弁護団の自己紹介が行なわれた後、原告団の代表である泉氏や、「被処分者の会」事務局長であり、原告団でもある近藤氏が発言を行なった。その後、原告側の弁論を行なった柿沼弁護士と重成弁護士が報告を行なった。柿沼弁護士は、「弁論では、東京都の再雇用制度の説明を強調した」。重成弁護士は、「都教委は、『再雇用制度では、退職前後において身分上の連続性はない。期待は主観的なものであり、法的保護に値しない』と主張したが、弁護団は、『退職前後の地位に一定の関連性・継続性が認められる。新規に職員を採用する場合とは、その具体的な事情、性質が著しく異なるものであることは明らかである』と反論した」と報告した。その後、結集した団体からのアピールが行なわれ、、最後に、7月19日の判決公判に結集することが全体で確認された。

 

7・19都教委の主張を容認する最高裁不当判決

 

 7月19日、最高裁第一小法廷(裁判長・山口厚)は、東京高裁判決を破棄し、原告団の請求を全面的に退ける不当判決を下した。徹底的に弾劾する。

 最高裁判決の内容は、東京都の再雇用・再任用手続きにおける裁量について、都教委の主張に沿って、あくまで「新たに採用するもの」と言いなして都教委の広範な裁量権を認めている。さらに、「他の個別の事情のいかんにかかわらず特に重視すべき要素であると評価し、そのような評価に基づいて本件不合格の判断をすることが…、著しく合理性を欠くものであったとは言えない」なぞと言っている。これは、「君が代」不起立を闘う教育労働者に対して、不合格の判断をしてもかまわないと言っているということだ。2007年当時、9割を超える高い率で再雇用・再任用が行なわれていたことについては、「当時は、希望者を全員再雇用する運用はなかった」と言っている。「雇用と年金の連携の観点から原則として採用すべき」とされていたことなどについては、具体的な事実関係を踏まえた検討をまったく行なっていない。一般的・抽象的な行政の裁量権を是認し、行政の主張に無批判に追随する判決だ。弁護団は「声明」で「司法権の使命を放棄した判決と言わざるを得ない」と弾劾している。この不当判決は、一審、二審の判決を破棄しているが、破棄する理由については、何一つ明らかにしていない。まさに、「破棄ありき」の判決だ。最高裁第一小法廷の5人の裁判官は、全員が第2次安倍政府の成立後に任命された者である。裁判長・山口は、日弁連からの推薦の慣行を無視して安倍が任命した者であり、裁判官・木澤は、加計学園の元監事だと言われている。安倍極右政府の下で、「三権分立」なぞ破壊され、戦時国家体制形成にむけた改憲を核心とした攻撃が強まり、翼賛化が加速している。これを打ち破る教育労働者の決起―「君が代」不起立が決定的に重要になっている。7・19不当判決を粉砕し、「朝鮮―中国―アジアの労働者の血に染まった『日の丸・君が代』の強制を許さない」と、「日の丸」「君が代」強制攻撃と対決し闘う教育労働者の一大決起を実現しよう。

                         〈東京・山谷日雇労働組合〉