「入管法」改悪阻止闘争

「入管法」改悪案の衆院本会議採決阻止を闘う(11月27日、衆院前)
「入管法」改悪案の衆院本会議採決阻止を闘う(11月27日、衆院前)

「入管法」改悪阻止闘争

 

      東京・山谷日雇労働組合

 

11・27衆院本会議採決―12・7―8参院本会議採決阻止へ闘う

 

 11月2日に閣議決定され、衆院に送付された「出入国管理および難民認定法(入管法)」改悪案は、11月13日から衆院法務委員会で審議が開始されたが、実質的な審議は、11月21日、22日、26日、27日の4日間、合計17時間15分だ。しかも、22日と26日は、「定例日外」に法務委員長・葉梨康弘(自民党)が職権で強引に開催したものだ。これは、これまでの委員会開催のルールを無視した「掟破り」であり、マスコミ各紙も「異例のスケジュール」と書き立てている。そして、11月27日には、衆院法務委員会で「入管法」改悪案が強行採決され、同日夜、本会議でも強行採決された。さらに、翌28日には、参院法務委員会での審議が開始されている。安倍極右政府は、12月10日の会期末までに、何としても改悪「入管法」を成立させようとしているのだ。成立阻止へと闘いを強化しなければならない。

 11月27日、東京・山日労と闘う仲間たちは、午前9時半すぎから衆院議員会館の前に陣取り、「入管法」改悪を阻止する固い決意の中、闘いを開始した。「『入管法』改悪を阻止するぞ」「外国人労働者の使い捨てを許さないぞ」「奴隷労働を許さないぞ」「『外国人技能実習制度』を撤廃しろ」「外国人労働者とともに闘うぞ」とシュプレヒコールが国会周辺に響き渡る。

 午前中に開催された法務委員会では、立憲民主党、国民民主党など6党・会派が、法相・山下に対する不信任決議案を衆院に提出したが、午後1時からの本会議で、これは否決された。そして、再度、法務委員会が開催され、午後5時半過ぎ、形ばかりではあれ野党が抵抗し、怒号の中で採決が強行された。法務委員会の理事である自民党・平沢勝栄は、「この問題は議論したらキリがないんです。いくらでも問題点が出てくるんです」と言い放ち、〝論議すればボロばかり出る、論議の必要はない、とにかく通してしまえ〟と強行採決したのだ。

 われわれの仲間は、激しい怒りの中、法務委員会での「強行採決弾劾!」のシュプレヒコールを叩きつけ、闘いを続行する。午後9時40分過ぎ、本会議で強行採決され、自民党、公明党、「日本維新の会」などが賛成票を投じて「入管法」改悪案は、可決され、衆院を通過した。われわれは、投票行動が始まるや、激しいシュプレヒコールを叩きつけ、可決した時点で、一段と激しく、「衆院可決弾劾!」のシュプレヒコールを声をからせながら叩きつけた。

 われわれのみが、唯一、国会前での「入管法」改悪阻止闘争に決起する中、この闘いに共感する何人もが「頑張ってください」と声をかけ、個人で手書きのプラカードをもって、国会前に起った人が数人、共にシュプレヒコールをあげるなど、闘う部隊の登場に期待と共感が拡がっている。こうした状況を全体で確認しながら、「今度は、参院前に結集し、改悪「入管法」の成立阻止闘争を闘う」ことを意思一致して、12時間を超えるこの日の行動を終えた。

 「入管法」改悪を絶対に阻止するという決意も固く、東京・山日労と闘う仲間たちは、12月7日午前から、翌8日の午前4時過ぎまで、夜を徹して18時間にわたる国会前闘争を闘いぬいた。

 12月7日、午前10時から参院議員会館前に陣取り、シュプレヒコール、アジテーション、ビラまきを行なう。「『入管法』改悪を阻止するぞ」「改悪『入管法』成立を阻止するぞ」「外国人労働者の使い捨てを許さないぞ」「奴隷労働を許さないぞ」「『外国人技能実習制度』を撤廃しろ」「外国人労働者とともに闘うぞ」とシュプレヒコールが国会周辺に響き渡る。

 全労連は、11月27日の衆院採決日に昼休みにだけ登場していたが、この日も、12時すぎから、約1時間の集会を行なった。数は、衆院採決時より少なく、約100人で、アリバイ的登場がミエミエだ。

 午後7時ごろには、「日の丸」を手にした「頑張れ日本! 全国行動委員会」なるファシスト集団が、「日本解体阻止! 亡国移民法案絶対反対!」を掲げて数十人で参院前にあらわれる。「外国人労働者排撃を許すな!」「ファシスト撃滅!」のシュプレヒコールとアジテーションでこれと対峙しつつ、闘いを継続する。

 国会での動きをチェックしながら、長丁場の闘いが続く。日をまたいで、8日午前〇時すぎから再開された参院法務委員会で、強行採決されるや、一段と大きくシュプレヒコールをくり返す。「法務委員会での強行採決弾劾!」。参院に叩きつける。

 1時過ぎに再開した参院本会議では、天皇制強化の攻撃として、ゴールデンウィークを10連休にし、労働者人民にナルヒト即位への「祝賀」を強制する特別法、漁民をすりつぶし、大企業参入を拡大する「漁業法」改悪など反革命法案が次々と採決され、成立していく。そして最後に、「入管法」改悪案の採決だ。自民、公明、「維新」などの賛成により改悪「入管法」が成立する。成立の報を受けて、さらに激しくシュプレヒコールを叩きつける。「『入管法』改悪弾劾!」「反革命国会粉砕!」「翼賛国会粉砕!」。未明の国会周辺に怒りのシュプレヒコールが響き渡る。

 なお、夜を徹して未明までの闘いを展開したのは、われわれと、「水道法」改悪、「漁業法」改悪、「入管法」改悪などに対して闘ってきた小グループだけであった。

 参院では、12月6日の法務委員会で、法務委員長・横山信一(公明)が「入管法」改悪案の審議を打ち切り、採決しようとしたために、野党五会派が法務委員長・横山の解任決議案を提出し、散会した。7日午前の参院本会議では、法務委員長・横山の解任決議案が、自民、公明、「日本維新の会」などの賛成多数で否決され、夜の本会議では、野党5会派が提出した、法相・山下貴司と首相・安倍晋三に対する問責決議案が、同じく与党などの賛成多数で否決された。そして、日をまたいで、8日、午前〇時すぎに再開された法務委員会では、与党が、委員長席の周りを体格の良い若手の議員が囲む中、野党の抗議を暴力的に抑え込み、怒号の中で「入管法」改悪案を強行採決した。続いて行なわれた参院本会議では、自民、公明、「日本維新の会」などの賛成多数で、午前4時すぎに改悪「入管法」が成立した。

 

外国人技能実習生の実態をウソとペテンで隠蔽し、「入管法」改悪を強行した安倍政府

 

 現行の「外国人技能実習制度」の中で、約27万人の外国人技能実習生が、居住し、労働している。この外国人技能実習生への長時間労働、賃金未払い、最低賃金以下の賃金は、常習化しており、雇用者側からの暴力、セクハラ、パスポート取り上げ、差別行為なども常態化している。在留期間は、最長5年であり、まさに、使い捨て、奴隷労働が横行しているのだ。

 これを拡大するのが、今回の「入管法」改悪だ。「深刻さを増す人手不足を解消するため」と称し、外国人の労働力を大量に導入し、使い捨て、奴隷労働を強制するというのだ。

 今回の「入管法」改悪で新設される在留資格の「特定技能1号」は、一定の技能が必要な業務に就き、在留期限が通算5年で家族帯同を認めないとするものだ。その上で、現行の「外国人技能実習制度」で、3年以上の経験を積んだ技能実習生は、無試験で「特定技能1号」が取得可能となる。法務省は、2019年度から5年間で、受け入れを見込む「特定技能一号」は、最大約34万5000人とし、うち約45パーセントは、外国人技能実習生からの移行を想定しているとしている。そして、導入初年度では、最大約4万7000人のうち55パーセント~59パーセントが、外国人技能実習生からの移行だとしている。業種によっては、100パーセントが外国人技能実習生から移行することもあるといわれている。

 要するに、「特定技能1号」の資格で導入予定の大半が、外国人技能実習生からの移行なのだ。にもかかわらず、「外国人技能実習制度」の中で噴出している様々な実態は、改善されるどころか放置されたままなのだ。したがって、新たな在留資格の導入とその下での外国人労働者の受け入れとは、外国人労働者を低賃金、劣悪な労働環境の下で奴隷のようにコキ使い、使い捨てにするというものに他ならない。

 外国人技能実習生が強制されている奴隷労働の実態とは、月240時間もの残業を強いられ時給が実質200円だった、作業中に指を切断する事故に巻き込まれたのに解雇―帰国を言い渡された、縫製工場で朝7時から夜11時まで働かされた、作業中に機械で指3本を切断する重症を負ったが会社は帰国を迫り治療費も自己負担を求めた、農業研修生であるにもかかわらず経営者から家事や洗車などの仕事を強いられたうえ、性暴力を受けた、などなど数限りない。「入管法」改悪は、使い捨て、奴隷労働の拡大であることは、だれが見てもわかることだ。にもかかわらず、安倍極右政府―法務省が行なったのは、聞き取り調査の調査票を改ざんし、ウソを並べて、外国人技能実習生の実態を隠蔽することだ。

 このことを追及され、政府は、渋々、小出しに実態を明らかにしてきた。厚生労働省が明らかにした外国人技能実習生の労災死は、2014年度から2017年度までの4年間で計30人である。この数字は、10万人当たりの労災死者数で計算すると、年平均で3・64人だ。日本の雇用者全体の労災死の比率は、2014年から2017年の年平均で10万人当たり1・73人であり、外国人技能実習生の労災死は、この2倍以上である。安全教育を十分しないままに、建設や食品製造など事故が起こりやすい職場で働かせているのが、原因である。また、法務省が提出した資料では、2014年から2017年の3年間で、実習中の事故12人、自殺6人など計69人もの外国人技能実習生が死亡していた。さらに、法務省が、「失踪」した技能実習生からの聞き取りを行なった調査票を野党が閲覧し書き写したものの集計データによると「失踪」した外国人技能実習生のうち67パーセントが最低賃金未満で働き(法務省は、当初これを0・8パーセントであるとウソを言ってきた!)、10・1パーセントが「過労死ライン」を超える残業をしていたことも明らかになった。首相・安倍は、12月6日の参院法務委員会で、69人もの外国人技能実習生の死亡という法務省作成の資料を突きつけられて、「表も見ておりませんから、お答えのしようがない。私は今ここで初めてお伺いをしたわけでありまして、ですから私は答えようがない」などとヘラヘラ笑いながら答えた。こうした、安倍の居直りと死亡した外国人技能実習生への冒涜を断じて許すことはできない。

 強制退去を命じられた外国人らを収容する入管施設で、待遇改善などを求める闘いが、頻繁に闘われている。東日本入国管理センター(牛久入管収容所)では、昨年4月13日に、仮放免不許可となったインド人が自殺をし、これに対し、長期収容に対する抗議として集団ハンスト闘争が闘われた。東京入管の収容場では、昨年5月に収容者が、収容施設のあり方を考え直すようもとめる要望書を提出しようとしたところ、入管側が受け取りを拒否したために、収容者22人がハンストを開始し、最大70人がハンストを闘った。この動きに呼応して、名古屋入管でも約30人がハンストに起った。牛久入管収容所では、今年11月20日に、ブラジル、イラン、スリランカ、中国、ミャンマー、ガーナ、ペルーなどの国籍の約30人が、「期限のない長期収容をやめ、仮放免を柔軟に認めてほしい」との法相、東日本入国管理センター長宛ての申入書を渡し、ハンストに決起した。大阪入管収容所でも、病気療養中の収容者の食事をめぐり、12月3日から10人以上がハンストを闘った。

 収容所内の生活環境は、デタラメ極まりない。4人~11人で一部屋に押し込められ、広さは、定員数プラス一畳程度だ。たとえば、4人なら5畳である。そこに、長期間押し込められるのだ。これもまた、「外国人は、煮て食おうが焼いて食おうが自由」という入管政策の基調に基づいている。絶対にに許してはならない。

 外国人労働者の闘いと結びつき、国境を超えた団結を形成しよう。外国人排斥を許さず、排外主義攻撃と対決しよう。「入管法」・入管体制を解体しよう。