特集「世界大恐慌爆発情勢下の世界の労働運動」

黄色いベストを着て実力の街頭行動を闘うフランスの労働者(12月1日)
黄色いベストを着て実力の街頭行動を闘うフランスの労働者(12月1日)

特集「世界大恐慌爆発情勢下の世界の労働運動」

 

フランス

 

 フランスでは、大統領・マクロンが環境対策を名目とした「炭素税」と称するガソリン・軽油などの燃料税引き上げを打ち出し、これに反対する労働者人民の闘いが、暴動的決起として爆発している。闘いは、燃料税の引き上げ問題にとどまらず、歴代のフランス政権が強行してきた「規制緩和」「労働市場改革」、労組破壊に対する怒りを背景にして、「マクロン退陣」をかかげた反政府闘争へと発展している。

 今年の4月から6月にかけて、「フランス国鉄」の労働組合は、マクロンの「国鉄改革」攻撃を粉砕するために、3ヵ月間の波状ストライキを闘った。このストライキに対して、フランス労働者人民は、「私はこのストライキを我慢するつもりです。なぜなら鉄道労働者は私が毎日闘っているのと同じ要求のために闘っているからです。マクロンは金持ちの大統領であり、鉄道労働者は一般の人たちの利益を守っています」と支持を表明した。

 11月17日から始まった労働者人民の街頭行動は、事故時の安全対策として自動車に搭載することが義務付けられている黄色いベストを着用して始められ、「イエローベスト・デモ」と呼ばれ、毎週土曜日に闘われている。最初のデモは、フランス政府の発表でさえ28万人に達した。パリ市内のデモでは、シャンゼリゼ通りで車両を燃やし、バリケードを築き、道路を封鎖し、治安部隊との攻防戦が闘われた。

 この「イエローベスト・デモ」の発端は、労働組合などの既存の組織による呼びかけではない。「共稼ぎだが生活は苦しい」「年金だけでは月末の食費を削らなくてはやっていけないのに、増税された」といった生活苦に直面する市民がソーシャルメディアに窮状を訴え、「黄色いベストを着けて街頭で抗議しよう」と呼びかけたことが発端となっている。

 その後、「イエローベスト・デモ」は、11月24日には17万人が決起し、警官隊との闘いで308人が拘束された。12月1日には14万人が決起し、600人以上が拘束された。12月8日には13万人が決起し、1220人が拘束された。その要求内容は多様なものだが、11月29日に一つのグループから「民衆の綱領」として発表された要求は、最初に「ホームレス0人」を掲げ、「富裕税の復活」、「所得税の累進性を高める」、「最低賃金を手取り1300ユーロ(約16万7000円)に引き上げ」、「年金増額」、「公共サービスの充実化(ガス・電力は公共サービスに戻す)」、「緊縮政策反対」、「正規雇用の増加」を掲げ、労働者階級の要求と同じものになっている。

 「イエローベスト・デモ」は、初期から連帯していた農民団体と貨物労組とともに、次第に多くの労働組合も起ち上がりはじめた。学生たちもマクロンの教育改革に反対して起ち上がっている。「フランス労働総同盟(CGT)」は、12月8日を大規模行動と決定し、9日からは無期限ストライキに突入すると宣言した。貨物労組は9日の夜から全国ストライキに突入している。中高校生はストライキと学校封鎖で闘っている。6日には360の中高等学校が一時的に閉鎖された。87の学校は全面閉鎖された。 

 当初、マクロンは、この「イエローベスト・デモ」を「取るに足りない人たち」なぞと侮辱する態度を取っていた。だが、燃料税の引き上げ延期を発表しても続く大規模デモをうけ、12月10日になってテレビ演説を行ない、「(一)最低賃金を1ヵ月100〇ユーロ(約1万3000円)増額、(二)年金生活者への増税を一部撤回、(三)残業代の非課税化、(四)経営者に対して従業員に年末賞与を提供するよう政府が求める」ことを表明した。これは、支持率が23パーセントにまで低下したマクロンが政権維持のために出した懐柔策だ。しかし、「イエローベスト・デモ」を闘う労働者人民の怒りは、マクロン打倒に向かって高まっている。

 

 ドイツ 

 

 ドイツでは、 「金属産業労組(IGメタル)」が、1月から2018年の労使交渉を開始した。1月8日には、6パーセントの賃上げを要求して24時間の「警告スト」に入った。「警告スト」は、組合員の投票を経て行う本格的なストライキではなく、交渉中に短時間の職場放棄等を行うもので、ドイツでは合法とされている。

 この「警告スト」には、ベルリンの「オーチス」(エレベーター)など80の企業で合計1万5000人がストライキに起ち上がった。1月10日には、「ポルシェ」、「ダイムラー」、「ポッシュ」(自動車部品)などの工場があるバーデンヴュルテンベルク州で2万5000人がストライキに起ち上がった。

 「IGメタル」の今回の賃上げ闘争は、ドイツ経済の好況と失業率の低下を背景としている。ドイツ連邦統計局が1月11日に発表した「実質国内総生産(GDP)速報値」は、前年比2・2パーセント増と過去6年で最高の伸びを記録した。高収益の企業が2パーセントという低水準の回答に固執していることに対して労働者の憤りが高まっており、「IGメタル」のイェルク・ホフマン委員長は、「企業側が要求に応じないなら警告ストから全面ストヘエスカレートし、無期限ストも辞さない」と宣言した。

 2月6日、「IGメタル」と使用者団体は、南西部の金属産業で働く90万人が対象の労働協約に合意した。これにより、労働者は4・3パーセントの賃上げと3月までの100〇ユーロ(約13万円)の一時金を獲得。さらに、育児や介護のために最大2年間、週28時間まで労働時間を短縮する請求権を付与される(「週28時間労働オプション」)。また、2019年はさらに業績が極端に悪化しない限り、月収の27・5パーセント相当の一時金のほか、400ユーロ(約52万円)が労働者に支給される。その際、育児や介護を担う者やシフト勤務者は、一時金でなく、8日間の休暇を選択することもできるようになる。

 ドイツ金属産業の労使は、原則として地域ごとに交渉するが、そのうち一つの地域を先導役(パターンセッター)に設定して先に交渉を行い、ほかの地域にその交渉結果を波及させるシステムを取っている。今回の労働協約の内容は、最終的に金属産業で働く390万人の労働者に波及する。

 しかし、労使交渉では、「週28時間労働オプション」利用した場合にも同じ賃金を保証するという組合側の要求は経営側に拒否された。また、交換条件として、経営側は希望する労働者には週労働時間を40時間に延長できることになった。

 ドイツ・メディアは、今回の労働協約を、「1984年に週40時間から週35時間の労働時間短縮を求めて7週間のストライキを実施し、IGメタルが要求をかちとった以来の労働時間に関する大きな成果だ」と評価している。

 7月16日から3日間、「アマゾン」の労働者がストライキに起ち上がった。この3日間のストライキは、スペイン、ポーランド、ドイツの「アマゾン」労働者の一斉ストライキの一環として闘われた。今回のストライキは、ドイツの「アマゾン」で働く労働者1万6000人のうち、6ヵ所の業務センターで働く2400人が闘った。ドイツでは、2013年に初めて「アマゾン」でストライキが闘われた。ストライキの後、「アマゾン」は定期的な昇給を実施するようになり、一部の倉庫では換気や照明が改善された。しかし、アマゾンはこうしたささやかな改善すら団体交渉に基づく協約として成文化することを拒否している。

 

 イギリス 

 

 イギリスでは、1月8日、10日、12日の3日にわたり、「鉄道海運運輸労働組合(RMT)」が、首相・メイによる「一人乗務拡大・車掌廃止・人員削減」攻撃に対決し、5つの鉄道会社の統一行動としてストライキを闘った。この闘いによって、ロンドン、リバプール、マンチェスター、ニューキャッスルなど全国主要都市間の交通がストップした。9月末には、「RMT」などに加盟するロンドン地下鉄労働者が「ピカデリー・ライン」で「人員削減反対」「安全を守れ」をスローガンにストライキを闘い、10月5日には、「セントラル・ライン」と「ウォータールー&シティ・ライン」でストライキを闘った。

 10月4日には、「ベーカリー食品労組連合(BFAWU)」が呼びかけ、「マクドナルド」、「ウェザースプーン(パブ・チェーン)」、「デリバルー(料理の宅配サービス)」、「ウーバー」などの不安定雇用労働者が、賃金の10ポンド(約1500円)への引き上げ、「ゼロ時間契約」の廃止などの要求を掲げて、初めての全国一斉ストライキを闘った。これは昨年9月の「マクドナルド」でのストライキをさらに拡大したものだ。「ゼロ時間契約」とは、就業時間が決まっておらず、会社側からの指示がある時だけ出勤する「待機労働契約」だ。イギリスでは、インターネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」が広がっている。イギリス政府の2月の報告書では、イギリス本土で昨年夏までの過去一年間に「ギグ・エコノミー」で働いたことのある人は約280万人に上ると試算している。「ギグ・エコノミー」で働く労働者は「自営業者」とされ、最低賃金や社会保障など労働者の権利は保障されない。この行動は、「ウォー・オン・ウォント(貧困との戦い)」などの市民団体と、製造業などで組織する「UNITE(ユナイト)」、「ベーカリー食品労組連合(BFAWU)」が呼びかけ、「イギリス労働組合会議(TUC)」と草の根の左派グループ「モメンタム」が全面的に支援した。このストライキには、アメリカの「最賃15ドル運動」の活動家も参加し、連帯を表明した。この闘いの一環としてロンドン・レスター広場で行なわれた集会には、労働党の「影の財務相」であるジョン・マクドネルが登壇し、「労働党が政権に就いたら、速やかに最低賃金10ポンドを導入することを約束する」と発言し、労働党の国会議員に自分の選挙区でピケットに参加するよう促した。

 労働党は、2015年9月に「強硬左派」と言われるコービンが党首となった。就任当時19万人だった党員は、2017年12月時点で56万4000人を突破し、党員数では欧州最大となっている。9月下旬にリバプールで行われた党大会には、欧州各国から若い社会主義者が多数参加して、会場が熱気で充満していたと報道されている。左に路線を変えた労働党の党員になったのは、「労働市場改革」によって、低賃金、「非正規雇用」を強いられる若者が多いと言われている。また、「イプソス」というマーケティング・リサーチの会社が世界28ヵ国で調査を行った結果、「社会主義を肯定する」と答えたイギリスの若者は、49パーセントに達している。EUからの離脱をめぐって、保守党では党首であり首相であるメイに対する信任投票がおこなわれるなど、混乱が続いている。その中で「『ゼロ時間契約』と呼ばれる待機労働契約を禁止する」、「生産諸手段の共有」、「エネルギー会社、郵便会社、鉄道会社の公有化」を強調するコービン率いる労働党の躍進に対して、資本家たちは戦々恐々としている。

州議事堂前でストライキ集会を闘う教育労働者(3月6日、ウェストバージニア)
州議事堂前でストライキ集会を闘う教育労働者(3月6日、ウェストバージニア)

 アメリカ 

 

 アメリカでは、労働組合運動を弱体化させるための法律である「労働権法」を制定した州が28となっている。「労働権法」は、「労働組合に加入しない権利」を定めている。それは、労働組合が闘い取った成果である労働条件や社会保障の引き上げといった恩恵を「ただのり」で手にする労働者の存在を許すことになる。賃金からの組合費の代理徴収である「チェック・オフ」の禁止は、労働組合の財政基盤を弱体化するものだ。

 また、〝リーマン・ショック〟以降、資本を救済するための企業減税によって税収が減り、そのしわ寄せが教育予算などの削減として強行されている。公務員や教育労働者の賃金が抑制され、公立学校の荒廃が進んでいる。学校現場では、資金不足のため、10年間も使ったボロボロの教科書が使われ、1週間に4日しか学校が運営されない状態が何年間も続いている。教育労働者は、「ダブル・ワーク」「トリプル・ワーク」をしなければ生活できない状態だ。そういった中、2月22日に、「労働権法」によって団体交渉が制限され、ストライキを禁止されたウェストバージニア州の教育労働者が、1990年以来、18年ぶりの全州ストライキに起ち上がった。全州55郡すべての学校を閉鎖して3万人の教育労働者が13日間のストライキを闘い、5パーセントの賃上げをかちとった。当初、「全米教員組合ウェストバージニア(AFTlWV)」と「ウェストバージニア教員組合(WVEA)」は、5パーセントの賃上げを要求した。しかし、上下両院とも共和党が多数を占める州議会は、「今年度2パーセント、その後2年間に各1パーセントの賃上げ」しか認めず、さらに、健康保険基金への州からの拠出を減らそうとした。これに怒った労働者は、2日間の予定だったストライキをさらに継続することを組合執行部に要求し、現場での闘いの熱気によってストライキは13日間闘われた。最終的には、5パーセント賃上げに反対していた上院も賃上げを承認し、知事は、健康保険基金問題についての検討委員会を設置すると回答した。この闘いによって、5パーセントの賃上げが教育労働者だけでなく、州の全公務員に適用されることになった。さらに、一連の組合攻撃(組合費の代理徴集の廃止など)とチャータースクール(公設民営校)の拡大も撤回された。さらに、このウェストバージニア州の教育労働者のストライキは、3月、4月、5月とケンタッキー州、オクラホマ州、アリゾナ州、コロラド州、ノースカロライナ州へと拡大し、いずれも勝利した。ストライキに起ち上がった教育労働者は、自分たちの賃金・労働条件の改善だけではなく、この数十年間、民主・共和両党によって繰り返されてきた企業減税に反対し、教育や公共サービスのための予算確保を要求して闘った。

 アメリカでは、「ウーバー」などの企業が、スマートホンのアプリケーションを使ったタクシーの配車を行ない、「ライド・シェア(乗り合い)」と称して既存のタクシー会社と対抗している。「ウーバー」は、連邦および州議会に「ライドシェア」の運転手を労働法の適用外とするよう働きかけるロビー活動を行ない、運転手を「自営業者」とし、失業保険や最低賃金の適用を逃れている。自動車の修理代や保険も運転手の自己負担である。これは、安倍政府が「働き方改革」で掲げる「非雇用の働き方」「雇用類似の働き方」そのものだ。これに対して、アメリカでは、「全米トラック運転手組合(チームスター)」や「タクシー運転手労組」による「ライドシェア」運転手の組織化を始めている。

 「ホワイトカラー・エグゼンプション」をめぐっては、トランプが、年収要件を4万7476ドル(約537万円)から3万3660ドル(約380万円)に引き下げようと画策している。

 

 アルゼンチン 

 

 アルゼンチンでは、マクリ政権が進める「緊縮財政政策」や「国際通貨基金(IMF)との交渉に反対するゼネストが、6月と9月に闘われた。ゼネストを主導したのは、「アルゼンチン労働総同盟(CGT)」だ。CGTは、2015年まで政権にあった左派の「正義党(ペロン党)」と近い関係にあると言われている。2015年の大統領選で現大統領・マクリが当選した。マクリは、歴代左派政権の政策からの転換を打ち出し、「構造改革」と「経済再生」を掲げて当選した。それはアルゼンチンの労働者人民に犠牲を強いるものであった。

 アルゼンチンでは、今年4月、米帝の長期金利が約4年ぶりに3パーセント台をつけた24日以降、通貨・ペソが急落し、通貨危機に直面した。米帝などが利上げしたことによって、資金の逆流が始まったのだ。アルゼンチン中央銀行は、資金流出を止めるために、政策金利を40パーセントまで高めた。「マイナス金利」「ゼロ金利」が常態化した日帝経済と比べれば、途方もない高金利だ。これだけの規模の金利引き上げは、当然、景気を悪化させることになる。アルゼンチンは、経常赤字、財政赤字の「双子の赤字」をかかえ、これまで7回も「債務不履行(デフォルト)」を起してきた。今回の通貨危機を乗り切るべく、5月8日、アルゼンチン政府は、2001年の融資打ち切り以来関係を断ってきたIMFに対して、300〇億ドル(約3兆円)の融資を依頼した。

 通貨危機に直面し、マクリは、政策の一つであった経済再生をあきらめ、財政再建を優先することにしたのだ。しかし、IMFによる融資が労働者人民に困苦を強制するものであることは、デフォルトに直面し、「緊縮財政政策」「規制緩和」「社会保障削減」を強制されたギリシャの例を見れば明かだ。

 マクリは、IMFとの規融資契約の一環として、2019年までに財政赤字をGDPの1・3パーセントに削減することを計画している。2008年には、アルゼンチン政府はIMFに対して財政赤字をGDPの3・2パーセントから2・6パーセントに削減することを約束した。この約束の履行のために公務員の人員削減や前の左派政権の下で導入された社会政策の予算削減が進められた。最新の「財政緊縮政策」としてマクリは7月初めに、2019年12月末まで公務員の新規採用を中止するという大統領布告に署名した。

 これに対して、6月25日にゼネストが闘われた。学校や銀行、ガソリンスタンドなどが営業活動を停止し、穀物輸出が止まり、公共交通機関が休業した。CGT傘下の労組は、前年比25パーセント超の物価上昇率に見合う賃上げを要求し、100万人以上が起ち上がった。8月7日には、IMFとの融資契約に反対して数千人の労働者たちが、聖カジェタン教会からプラサ・デ・マヨ(五月広場)までのデモを闘った。このデモは、「人民経済労働者連合(CTEP)」と「バリオス・デ・ピー(立ち上がる地域)運動」が呼びかけた。デモの先頭には「労働者はIMFに屈服しない」と書かれたバナーが掲げられた。CTEPは、マクリ政権に対して緊急の食料確保、労働者居住地区の環境改善、社会的インフラ、家族農業、麻薬中毒の5つの課題のための法律の制定を要求した。9月25日のゼネストでは、空港や鉄道など公共交通のほか、工場などが止まった。

 

ゼネスト集会を闘う韓国「民主労総」の労働者(11月21日、ソウル)
ゼネスト集会を闘う韓国「民主労総」の労働者(11月21日、ソウル)

 韓国 

 

 韓国では、大統領就任時、「非正規職ゼロ時代」と宣言しながら、実際には公共部門で子会社を作り、「非正規雇用」労働者を「正規職」と称して賃金や労働条件を変えずに働かせるというペテンをやっている文在寅を糾弾して、11月21日、ソウルをはじめ韓国全域で「民主労総」の組合員16万人がゼネストに突入した。

 ゼネスト集会では、「△弾力勤労制期間拡大推進中断、 △光州型雇用推進中断、 △ILO核心協約批准、 △まともな正規職転換、 △非正規職撤廃、 △年金改革」などを要求した。「弾力勤労制」とは、長時間労働と賃金削減をもたらす変形労働時間制だ。「光州型雇用」とは、光州市長が主導するプロジェクトで、「企業は投資を、労働界は労働条件を譲歩して新規雇用を創り出そう」というものだ。労働者にとっては、賃下げと成果主義賃金などを強制する攻撃でしかない。文在寅は、大統領選挙前から「光州型雇用」に関心を示していた。当選後には、大統領直属の「雇用委員会」が大統領就任後の100日間、優先的に進める「雇用100日計画」を発表した。それには「労使共生型雇用モデル(光州型モデル)拡散方案」を制定するという計画が含まれていた。「労使共生」なぞという文言は、文在寅が階級闘争を鎮圧し、資本の救済を目的としたブルジョア政治家であることを端的に示している。「金属労組」現代車支部は、「『光州型雇用』は韓国労働者全体の賃金を下降平準化する反労働者的政策」だとし、これに現代自動車が合意すれば全面ストライキに突入する方針だ。

 今回のゼネストの主力部隊は「金属労組」だ。「現代自動車」、「起亜自動車」、「韓国GM」、「現代重工業」、「大宇造船」をはじめ100以上の事業場で約13万人がストに突入した。「公共運輸労組」所属の「韓国ジョブワールド」、「ソウル大病院」、「KT常用職」、「国民年金」などの事業場もストライキに突入した。「韓国ジョブワールド」は、韓国政府の雇用労働部が所管し、「職場体験」などを実施する機関だ。文在寅政府は、「正規職転換」というペテンを「韓国ジョブワールド」で行なっている。「韓国ジョブワールド」には「正規雇用」労働者は50人しかおらず、「非正規雇用」労働者は340人もいる。「非正規雇用」労働者41人は、「韓国ジョブワールド」の子会社化による集団解雇を許さず、「非正規職集団解雇問題解決」を要求して、この日、無期限ハンストに突入した。

 ゼネスト集会は全国同時多発で開かれた。 全国15の地域で開かれた集会には5万人の労働者が参加した。 「民主労総」のキム・ミョンファン委員長は集会発言で 「ゼネストをめぐり、青瓦台と与党は『民主労総』を敵対視する発言を吐き出している」とし、「特に執権与党の院内代表が『弾力勤労制』拡大のために労働界を強迫するのなら 『民主労総』はまた機械を止めて仕事を止める」と警告した。「金属労組」のキム・ホギュ委員長も 「『金属労組』のゼネストの核心的な要求は、財閥改革と労働法改正、造船産業構造調整問題解決」だとし、「なぜ労働者たちがこれらの要求を掲げてゼネストをするのか、 政府と国会、言論は理解しなければならない。全労働者の権利を保障するゼネストなら、何度でもまたストライキをする」と闘う決意を明かにした。

 朴槿恵を打倒した労働者たちから「キャンドル大統領」と呼ばれた文在寅は、「弾力勤務制」拡大について野党と合意し、「光州型雇用」について、与野党の院内代表との間で超党派的支援に合意している。大統領秘書室長は「民主労総は社会的弱者ではない」と発言し、「共に民主党」院内代表は「民主労総は頑固一徹」と非難を始めている。韓国労働運動は、敵対の度合いを強める文在寅を突破して闘う局面に来ている。