特集 世界大恐慌爆発情勢下の世界の労働運動

マクロンの年金改悪阻止に150万人が起ち上がった(12月5日、パリ)
マクロンの年金改悪阻止に150万人が起ち上がった(12月5日、パリ)

世界大恐慌爆発情勢下の世界の労働運動

 

フランス 

 

 2018年11月の仏帝大統領・マクロンによる「燃料税増税」の発表に端を発し、全国に拡大した「黄色いベストデモ」は、開始から一年を迎えた。マクロンは、2019年に燃料税を増税することを断念し、最低賃金の引き上げや年金生活者向けの減税などを発表し、事態の収束に動いた。2019年1月から、フランスの「法定最低賃金」(SMIC)が時給10・0三ユーロ(約1220円)に引上げられた。フランスでは、最賃水準で就労する労働者の割合は、雇用労働者全体の10パーセント~11パーセントである。2018年10月の時点で、最賃水準で就労する労働者が198万人おり、民間部門の雇用労働者の11・5パーセントに相当する。さらに、低所得の就業者(自営を含む)を対象とする活動手当も増額された。活動手当は、世帯構成や収入額に応じて支給されており、平均で月額158ユーロ(約2万円)。子供がいない独身世帯で収入が月額1550ユーロ(約19万円)の場合の支給月額は133ユーロ(約1万6000円)であり、2019年1月から月額100ユーロ(約1万2200円)増額されることになった。

 2019年に入ると、マクロンが新たに打ち出した年金制度改悪に対して、これを阻止するフランス労働者人民の闘いが燃え広がっている。マクロンは、2025年をめどに、職業別に42種類存在する個別の年金制度を廃止し、統一年金制度の導入を計画している。これによって、「パリ交通公団」(RATP)および「フランス国鉄」(SNCF)の労働者に認められている「優遇定年退職制度」が廃止され、年金受給額が減る労働者が出ることになる。フランスの新聞社が行なった世論調査では、「改革反対」が47パーセントに達し、「賛成」は29パーセントにとどまっている。

 9月13日、地下鉄などの公共交通機関の労働者が、計画されている年金制度改悪をめぐってストライキに起ち上がった。RATPによると、パリ市内の地下鉄16路線のうち10路線が全線運休となり、主要地域鉄道の2路線でも運行が完全に停止し、「非常に大きな乱れ」が出たという。ストライキに起ち上がった地下鉄労働者は、マクロンの年金制度改悪によって、地下での長時間労働といった過酷な業務への埋め合わせとして数十年前に認められた早期退職の権利が奪われ、勤務年数が増えると批判している。RATPの年金制度では、地下で働く労働者の年金支給年齢は52歳であり、通常の公的年金支給開始年齢よりも10年早い。過酷な労働条件で働く労働者がかちとった権利を奪うマクロンの攻撃に対して、反撃の闘いに決起したのだ。

 9月24日には、フランス全土でマクロンの年金制度改悪に反対するデモが闘われた。全国170ヵ所で15万人がデモに起ち上がった。この全国デモは、「労働総同盟」(CGT)、「統一労組連盟」(FSU)、「連帯(Solidaires)」の3労組と「全国高校生連合」(UNL)、「全国学生連合」(UNEF)が共同で呼びかけ、「SNCF」の労働者もデモに呼応してストライキに起ち上がった。CGTのマルティネス書記長は、「負担は増やし、給付は減るという年金改悪に反対する最初の集中行動であり、政府が対応しなければ、今後もさらに行動を継続する」と闘う決意を明らかにした。

 12月に入ると、闘いはさらに拡大している。12月5日には、フランス全土で150万人がデモに起ち上がり、鉄道労働者、病院労働者、警官、消防隊員などがストライキに起ち上がっている。フランス社会は機能停止寸前となった。闘いに起ち上がった労働者人民の数も大きく拡大し、2018年11月に闘われた「黄色いベスト」の最大参加者数である29万人を大きく上回った。「高速鉄道」(TGV)の9割が運休し、その他の電車も大幅に本数を減らして運行した。教師のストにより、多くの学校も休校となった。仏帝首相・フィリップは、12月11日、譲歩案を発表したが、SNCFの労働組合は、これを批判し、ストライキの「強化」を呼びかけ、フランスの三大労組連盟はいずれも譲歩案を批判し、闘いを継続することを明かにしている。フランス労働者人民の怒りは、マクロン打倒に向かって高まっている。

教員組合の3万人がストライキに起ち上がった(1月14日、ロサンゼルス)
教員組合の3万人がストライキに起ち上がった(1月14日、ロサンゼルス)

 

アメリカ 

 

 アメリカでは、昨年2月、「労働権法」によって団体交渉が制限され、ストライキを禁止されたウェストバージニア州の教育労働者が、1990年以来、18年ぶりの全州ストライキに起ち上がった。このウェストバージニア州の教育労働者のストライキは、2018年の3月、4月、5月とケンタッキー州、オクラホマ州、アリゾナ州、ノースカロライナ州へと拡大し、いずれも勝利した。

 この教育労働者の闘いは、2019年に入り、さらに拡大・前進している。1月14日から22日まで、3万人の「ロサンゼルス教員組合」(UTLA)がストライキに起ち上がり、6パーセントの賃上げだけではなく、クラス人数と移民労働者の権利で勝利している。ロサンゼルス市は、クラス生徒数の制限を復活し、ほとんどのクラスで2022年までにクラス人数を4人削減する。全国で二番目に生徒数の多い学校区であるロサンゼルスは、チャーター校推進派が教育委員会の多数を占めているにもかかわらず、新しいチャーター校建設を停止する決議に賛成した。さらに、看護師、司書、カウンセラーをもっと採用し、標準テストを減らし、警察による恣意的な生徒取調を減らし、移民生徒支援基金を立ち上げ、30校で予算管理を地域コミュニティーに任せることに合意した。

 2月11日から13日には、コロラド州デンバーの「デンバー教員組合」(DCTA)が、成果主義賃金システムの是正などを要求してストライキに突入した。このストライキは、2008年以降、10年余にわたる教育予算削減と企業手法による教育に反対する闘いとして闘われた。ストライキを背景とした交渉を通じて、新しい協定では基本給と年功・学歴給の割合が引き上げられ、教員の給与のための支出が総額2300万ドル(約25億円)増額され、この学校区の5500人の教員・養護教員・カウンセラーに平均11・7パーセントの賃上げを実現し、給与等級は30等級から20等級に減らされ、成果給は制限されることとなった。

 10月17日から31日には、「シカゴ教員労組」(CTU)が94パーセントの高批准率でストライキを闘った。このストライキには、CTUの2万5000人の組合員とともに、補助教員、バス運転手、警備員その他の職員で組織されている「サービス従業員労組ローカル73」(SEIU)の組合員7500人も参加した。CTUの要求は、賃金要求とともに「クラス人数の制限と制限を超えた場合のクラスの新設」、「カウンセラーとソーシャルワーカーの増員と担当生徒数の削減と全校への看護師の配置」、「ホームレスの生徒たちの住宅問題や貧しい市民のための低廉な住宅確保」なども含んでいる。SEIUの要求は、賃上げ、健康保険と年休の獲得、外部委託の廃止、問題を抱える生徒を教える教員の研修の充実だ。シカゴ市にはホームレスの生徒が1万6000人いる。CTUとSEIUは、「教員の労働条件は、生徒の学習条件である」として「授業期間中の強制立ち退きの禁止、州による家賃規制、持続可能な住宅のための市の政策、初めて住宅購入する教職員に3万ドル無利子住宅ローン、『仮住居』住まいの生徒に対する学用品、制服、通学費、校外授業への援助費の増額、その援助担当の職員の配置」などの要求項目を労働協約の中で認めることを市長に要求した。さらに、そのために必要な財源を50人以上の従業員を雇う企業に人頭税を課税し、税収積立金会計を教育や住宅に使用し、100万ドル以上の金持ちへの所得税を増額することも併せて要求している。CTUとSEIUは、合同でストライキ準備訓練を行ない、スト突入直前の10月14日には1000人が市中心部でデモを闘った。シカゴ市長・ライトフットは、協約期間中の5年間に16パーセントの賃上げを提案している。しかし、組合側は賃金だけではなく、教員と生徒の教育環境の改善の方に力を入れており、市長と対立している。

 また、アメリカでは、九月に「ゼネラルモーターズ」(GM)で、12年ぶりのストライキが闘われている。

エクアドル政府の緊縮財政政策に対決する街頭実力決起(10月3日、キト)
エクアドル政府の緊縮財政政策に対決する街頭実力決起(10月3日、キト)

 

南米(エクアドル、ブラジル、アルゼンチン、チリ)

 

 南米では、エクアドル、ブラジル、アルゼンチン、チリなどで政府の緊縮財政政策に対決するデモやストライキが闘いぬかれている。

 エクアドルでは、10月1日、大統領・モレノが「国際通貨基金」(IMF)の財政支援を受けるための緊縮財政政策として燃料補助金廃止を打ち出した。これに対する抗議の大規模デモが10月3日から開始され、タクシーやバス、トラックの運転手が道路を封鎖し、学生、労組も抗議活動に起ち上がった。モレノは非常事態宣言を発令し、10月7日には、首都をキトから第二の都市・グアヤキルに一時的に移転する事態となった。10月14日、モレノは、大統領令を発令し、補助金廃止を撤回した。

 ブラジルでは、昨年10月、左派のルセブに代わって右派のボルソナロが大統領に就任した。ボルソナロは4月、国立大学予算の大幅削減計画を打ち出した。この計画は、国立大学を財政的に締め付けることによって、民間の教育企業に高等教育市場を開放することを狙ったものだ。これによって、3000人の修士・学士への奨学金が停止された。一方、計画発表の直後から有力な教育企業の株価が急上昇した。計画では、社会学や哲学の分野の教育への支出の停止も計画されている。ボルソナロは、これらの分野を「共産主義」とみなしている。これに対して、全国で100万人の学生、学者、教員がデモに起ち上がった。首都・ブラジリアでは、学生たちが大統領の肖像を燃やしながら「ボルソナラよ、のた打ち回れ」というシュプレヒコールを叩きつけた。今回のデモは、就任早々の大統領に対する抗議行動としてはこの数十年で最大の規模となった。

 アルゼンチンでは、1月、大統領・マクリの緊縮財政政策や公共料金高騰に抗議するデモが、首都・ブエノスアイレスで闘われ、数万人が参加した。マクリは、IMFから財政支援を受けるために、財政赤字をゼロにしようと補助金を減らし続けている。地元メディアの試算によると、電気・ガス料金はマクリの就任以降に2000パーセント超も上昇し、さらに上昇するとみられている。デモに参加したトラック運転手の組合指導者は、「生活できない。政府が導入した措置はすべて、労働者を苦しめるものだ」などと訴えた。4月に発表された統計によると、アルゼンチンでの貧困ライン以下の人口の割合は、2017年には25パーセントだったが、2018年12月には32パーセントへと増加している。4月には、「労働総同盟」(CGT)が首都・ブエノスアイレスでのデモを呼びかけ、数千人が起ち上がっている。

非常事態宣言をものともせず、街頭で闘う労働者(10月19日、サンティアゴ)
非常事態宣言をものともせず、街頭で闘う労働者(10月19日、サンティアゴ)

 チリでは、10月6日、大統領・ピニェラが公共交通機関の運賃値上げを発表した。これに対して、首都・サンティアゴで抗議デモが始まった。労働組合はゼネストをも辞さず闘いぬく意気を示し、警官隊は催涙弾、ゴム弾や放水銃でデモ隊の排除を試み、首都の大部分は機能停止状態に陥り、学校は25日まで閉校になった。10月19日、ピニェラは非常事態宣言を発令し、運賃凍結を発表したが、デモは止むことはなく、同日、軍がサンティアゴでの夜間外出禁止令を発令した。それでも抗議デモは続き、軍はさらに20日夜から21日朝までの夜間外出禁止令を発令した。チリで国内問題のために軍が出動するのは、ピノチェットによる17年間の軍事独裁政権が崩壊した1990年以来、初めてだ。デモは、他の地域にも広がり、検察当局の20日夕刻時点の発表によると、同日のデモで1462人が逮捕され、このうちサンティアゴでの逮捕者は614人にのぼった。デモ参加者と警官隊との衝突では23日までに18人の死者が発生している。ピニェラは、22日夜、全国向けテレビ放送で、過去数十年の間に山積した施政上の課題を認め、謝罪を表明した。さらに、今回の労働者の怒りの根元にある問題に取り組むとして、年金増額、手ごろな医療保険、医薬品の値下げや安定した電気料金の水準などを約束した。

集会終了後、国会に向けたデモで機動隊と激突する労働者(11月9日、ソウル)
集会終了後、国会に向けたデモで機動隊と激突する労働者(11月9日、ソウル)

 

韓国 

 

 韓国では、10月29日、「民主労総」が国会前で記者会見を行ない、「弾力勤労制期間拡大と労働法改悪阻止のための闘争」を宣言した。「民主労総」は、11月9日に「全泰壹烈士精神継承全国労働者大会(労働者大会)」を闘い、国会が「弾力勤労制期間拡大」と労働法改悪案を通過させようとするならば、ゼネストを闘う計画を明らかにした。

 11月9日の「全泰壹烈士精神継承全国労働者大会」には、組合員約10万人が結集した。結集した組合員は、政府と国会に対して「△労働法改悪粉砕、△労働基本権争奪、△非正規職撤廃、△社会公共性強化、△財閥体制改革」を要求し、「弾力勤労制期間拡大」と労働法改悪が強行されれば、ゼネストを闘うと宣言した。結集した組合員は、「文在寅政府は、『積弊清算、労働基本権拡大、財閥改革』などの改革課題を放棄したまま、結局逆コースを暴走している」と非難した。集会では、闘争を闘っている現場労働者たちの連帯発言も続いた。「公共運輸労組全国鉄道労働組合」の事務局長は、「鉄道労組は、国民の便宜と安全のための安全人員を補充する闘争をしている」とし、10月の警告ストライキに続いて11月20日の無期限全面ストを予告した。「全教組」の慶北支部長は、「文在寅政府は、全教組解雇者が労働部長官との面談を要請したところ、18人の解雇者を暴力で鎮圧する蛮行を行なった」とし「文在寅政府は、朴槿恵政権を継承している」と批判した。「民主一般連盟」の副委員長も「国土部は、韓国道路公社の社長を庇護して自分の取り分ばかりに汲々とし、解雇労働者を無視している」とし「このまま死んでも闘争を止めない」と宣言した。

 文在寅は、今や、資本主義防衛を前面にして韓国労働者階級に襲いかかっている。「弾力勤労制期間拡大」とは、資本が法定労働時間に縛られることなく一定の期間内で労働者を好き勝手に働かせることができるものだ。労働者は、繁忙期に過労死レベルの強労働を強いられる一方、夜間手当なども支払われなくなる。文在寅政府は、2018年7月に導入された「週52時間労働制」によって労働時間短縮の影響に苦しむ資本の意向を受け、一定の単位期間内に労働時間を調整することを前提に、法定労働時間を超えて勤務させることができる「弾力勤労制期間拡大」で単位期間を延長しようとしている。これは、日本の「変形労働時間制」と同じ内容だ。「民主労総」は、昨年11月21日、ゼネストを闘い、全国14地域で16万人集会を闘った。これによって、文在寅は、2018年末までとしていた法改悪を延期せざるを得なくなった。しかし、文在寅は、「弾力勤労制期間拡大」の強行を断念はせず、ゼネスト翌日の11月22日、経済・社会政策に関する大統領の諮問機関である政・労・使・公益員18人で構成する「経済社会労働委員会」の第1回会議を開催し、「民主労総」の委員1人が欠席する中、「弾力的労働時間制拡大」について議論する「労働時間制度改善委員会」を設置することを決定した。そして、2019年2月19日、「経済社会労働委員会」は、「弾力的勤労時間制」の単位期間を最長6ヵ月に延長することに合意した。この合意には、二大労総のうち、「韓国労総」は参加していたが、単位期間の延長に強硬に反対している「民主労総」は参加しなかった。「民主労総」は、「改正案は、労働時間短縮の努力を帳消しにしてしまう」として、「経済社会労働委員会」への参加を拒否し続けた。「民主労総」は、単位期間の6ヵ月への延長は3ヵ月連続で週労働時間の64時間への延長を可能とする「改悪」であるとして合意案を批判し、2019年3月6日にゼネストを闘った。

 文在寅はさらに、この「弾力的勤労時間制拡大」を突破口に、資本が要求する労働基本権の全面解体と労組破壊に突き進もうとしている。それは、争議の際に労働者が職場を占拠することを禁止し、代替要員=スト破りの投入を無制限に認めるというものであり、資本による一方的な団体協約解約の容認も検討している。さらに、資本が行なう不当労働行為に対する処罰条項の削除を公然と要求し、労働組合による「不当労働行為」の認定と規制を求めている。米帝で「労働組合に加入しない権利」を規定した「労働権法」を制定する州が拡大し、労働組合の存在そのものを否定する動きが強まっている。文在寅は、これを模倣しながら階級的な韓国労働運動の解体を強行しようと狙っているのだ。韓国労働運動においては、資本主義防衛のために敵対を深める文在寅を突破して闘うことが課題となっている。